ビジネスオブジェクツ会長「汚名返上の気分」

Charles Cooper (CNET News.com)

2005-09-15 22:36

 ネットバブルを経験した多くのIT企業幹部と同様に、Bernard Liautaudも良い時は恐ろしいほど良く、そして悪い時は恐ろしいほど・・・とにかく、恐ろしいことを知っている。

 Business Objects の会長を務めるLiautaudは、その恐怖を身をもって味わった。売上は激減し、株価は50ドルから5ドルに急落した。しかも、製品の移行は困難をきわめ、顧客は財布の紐を引き締めた。ひとことでいえば、先行きは暗かった。

 ところが、最近は悲観的な意見などとんと聞こえてこない。ウォールストリートはBusiness Objectsの一挙手一投足に注目している。変化は数字にも現れている。直近の四半期の利益は前年同期の2倍を超え、当四半期の利益予想も上方修正された。いまでは年商10億ドルも射程範囲だ。

 Business Objectsは1990年にLiautaudらによって設立され、その4年後にはNasdaqに上場し、米国の証券市場で取引される初のフランス企業となった。

 Microsoft、Google、Oracleといった企業が華やかな話題を振りまいているのに比べて、Business Objectsの主力事業であるビジネスインテリジェンスはささやかな注目しか集めていない。しかし、企業のIT予算が依然として限られている現状では、ビジネスインテリジェンスは購買担当者が真剣に検討する可能性のある数少ない領域のひとつだ、とアナリストらは考えている。この分野のベンダーは、企業がすでに購入・導入しているアプリケーションを利用して、より良い意思決定を下せるようにすることができると、企業に訴えることができるからだ。

 創立15周年を前に、LiautaudはCNET News.comのインタビューに応じ、シリコンバレーで成功を収めた数少ないフランス人企業家として、ソフトウェアビジネスの変遷を語った。

--まもなく、Business Objectsは創立15周年を迎えます。いい時もあれば、悪い時もありました。もうだめだ、と思ったこともあるのですか。

 もちろん、そういう時もありました。当社は1996年にアーキテクチャを変更し、すべての製品を抜本的に書き換えました。このプロセスは困難を極めましたが、最終的には新しいWindowsプラットフォームに移行し、優れた製品を発表することができました。しかし、新しいプラットフォームに移行する準備が整っている顧客はいませんでした。売上は減り、株価は50ドルから5ドルに急落しました。「顧客のニーズを見失っている」と批判されることもしばしばでした。しかし、われわれは問題の根本に集中し、ソフトウェア開発の方法を見直したほか、本拠地をパリからカリフォルニアに移し、米国のパートナーとの関係を再構築しました。この結果、状況は目に見えて良くなりました。

--あなたは米国のソフトウェア業界で成功を収めた数少ないフランス人起業家のひとりです。なぜ、欧州からはもっと多くのソフトウェアベンチャーが出てこないのでしょうか。

 確かに、成功を収めた欧州企業の数はそれほど多くありません。原因はいくつかあります。ひとつは、欧州は同質的な市場ではないため、事業を拡大するのが難しいということです。

--EUという枠組みがあっても、国境を越えることは難しいのですか。

 そうです。フランスや英国、イタリア、ドイツでは、それぞれ事業のやり方が異なっています。これが欧州企業が事業を拡大する際の大きなハードルとなっているのです。また、ある種の悪循環もあります。(欧州には)それほど多くの(テクノロジー)企業がないので、人材プールを自力で形成しなければなりません。ところがシリコンバレーでは、どこに行けばどんな人材がいるかを誰もが知っています。

--Goldman Sachsの調査では、回答者の79%が今後1年以内にビジネスインテリジェンスツール/アプリケーションを購入する予定があると答えています。IT業界はビジネスインテリジェンスツールに対する考えを改めたのでしょうか。

 IT業界はしばらく前から、ビジネスインテリジェンスに高い優先順位を置くようになっています。ERPとSFA(営業支援システム)の導入はかなり進んでいるものの、多くの企業は「これほど手間をかけたのに、まだビジネスを正確に把握することができない」と嘆いています。しかし、これは次のステップなのです。

 現代の企業は「情報の管理」という大きな問題を抱えています。膨大なデータを前に、途方にくれているのです。情報をうまく活用できないために、判断ミスを犯すこともしばしばです。データではなく、直感で判断しているからです。当社の使命は無知を排除すること--知的な企業を創造することです。

--第2四半期の業績は予想を上回るものでした。しかし、競争は激化しつつあります。この秋には、ビジネスインテリジェンスの分野でも競争は激しくなるのでしょうか。

 どんな市場でも、成長し、注目が集まるようになれば、競争の発生は避けられません。この1年あまりの間に、当社は飛躍的に成長し、この分野のNo.1として、不動の地位を築きました。分け前に預かろうと、最近ではMicrosoftやSAPといった大企業もこの分野に参入しつつあります。

--Microsoftについてお伺いします。Microsoftはしばらく前から、SQLサーバ用のビジネスインテリジェンスツールを提供しています。この製品は成功を収めたとはいえませんが、Microsoftはまもなく発売されるSQL Server 2005を通して、中小企業市場にも触手を伸ばそうとしています。これまでのところ、Business ObjectsはMicrosoftの追い上げをかわしていますが、今後も優位を保つためにはどうすれば良いのでしょうか。いうまでもありませんが、Microsoftは巨大な企業です。

 もちろん、Microsoftの挙動には目を光らせています。しかし、当社の優位が脅かされるとは思っていません。当社は今後も、この分野のリーダーであり続けるでしょう。企業が求めているのは、どのアプリケーションからも独立したソリューションです。しかし、Microsoftは特定のデータベースサーバ--具体的にはSQL Serverを推進しています。Microsoftには、企業が最も重視している独立性がないのです。

 (IT業界では)ソリューションの柔軟性も重視されていますが、これもMicrosoftの得意分野とはいえません。また、当社がこの分野のパイオニアであるのに対し、Microsoftは後発組です。

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