ソフトウェア価格体系の基礎を揺るがしかねない新しい技術に対して、Microsoftがみずからの態度を明らかにしようとしている。
同社は米国時間10日、仮想化ソフトウェアとうまく適合できるようにサーバ製品のライセンシングを変更し、その詳細を発表した。仮想化ソフトウェアは、大企業からサーバを統合しコストを削減する手段とし注目される、新たなテクノロジーである。
仮想化を利用すると、作業をより少ないマシンで効率的にこなせるようになり、企業はサーバの所有数を減らすことができると、こうした技術の支持者らは主張している。Microsoftの「Virtual Server」やEMCの「VMware」、XenSourceの「Xen」といった仮想化ソフトウェアは、複数のオペレーティングシステム(OS)もしくは同じOSの複数のインスタンスを同時に稼働させる。このとき各インスタンスは、それぞれ独立したコンピュータのように動作する。
しかし、マルチコアプロセッサベースのサーバ技術と同様に、仮想化ソフトウェアテクノロジーは、広く浸透しているプロセッサごとの価格体系とはうまく適合しない。現在、サーバソフトウェアの大半は、1プロセッサごとにライセンスされている。ところが仮想化技術においては、データベースや電子メールサーバなどのアプリケーションを稼働させている「仮想化された」複数のOSのインスタンスが、1台の物理サーバ上に存在できるため、現行の価格体系はそぐわないのだ。消費者がこうした仕組みを目の当たりにすれば、現行の価格は高すぎると考えるようになり、ソフトウェアメーカーがたいへんな混乱状態に陥る可能性がある。
Microsoftの新ポリシーは、新しい技術と従来のライセンス体系を調和させるためのものだ。12月から適用される同ポリシーでは、サーバソフトウェア製品の価格を、サーバに搭載されている物理プロセッサ数ではなく、サーバ上で稼働しているインスタンス数で決定することになる。
コスト効率のよい方法でマシンの処理能力を分割できるようになることから、こうした変更はユーザーに利益をもたらすものだと、Microsoftは述べている。また、同社でサーバおよびツールのマーケティングを担当するコーポレートバイスプレジデントAndy Leesによれば、Microsoftはパートナープログラムや価格決定ポリシーを通して、自社製品における仮想化技術の利用を拡大していく意向だという。
Leesは「価格体系やライセンス体系などが、テクノロジーの採用を阻んでいる」と指摘し、さらに「ユーザーは、自分たちが袋小路へ向かっているわけではないことを知りたがっている」と話した。
アナリストらは、他社が何らかの対応をせざるを得ない新たなポリシーを打ち出したことで、Microsoftは競合企業を一歩引き離したと述べている。