第17回 将来の“あるべき姿”を決めるEAの基本方針

相原 慎哉(みずほ情報総研) 2005年10月21日 11時33分

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●“あるべき姿”はどうやって決めるのか

 EAを導入する過程では、ビジネスやデータなどのアーキテクチャの各層について現在の状況(As-Is)を把握した上で、あるべき姿(To-Be)を明らかにしてそこに向かう計画を立案・実施していくことになる。このとき問題になるのが、「あるべき姿とは何か」ということである。実際のEAの取り組みの中でも、現状のアーキテクチャを文書化したものの、どうやってTo-Beモデルを作成したらよいのかわからない、という声を耳にすることがある。

 例えば、同業他社の優れたビジネスモデルを見て、当社でも同じことをやりたいと考えれば、それがあるべき姿かもしれない。インターネットやRFIDといった新しいテクノロジーによって、新たなビジネスチャンスが生まれることが予見されるならば、それを取り込んだ組織があるべき姿かもしれない。前者はベストプラクティスに基づくビジネス主導のあるべき姿、後者は技術革新に基づくテクノロジー主導のあるべき姿である。

 しかしながら、こうしたあるべき姿が頭の中にあるだけでは、それをアーキテクチャに反映させるのは難しい。その姿を示す情報が明確化されておらず、組織内で共有もされていないためである。情報の明確化と共有はEA導入の効果の一つだが、いきなりTo-Beモデルを記述しようとするのではなく、段階を踏んで作業を進める必要がある。

●ビジョン、ミッション、経営戦略の活用

 一つのヒントは、組織のビジョン、ミッション、経営戦略である。これらが明確に定まっていれば、組織の進もうとする方向性が見えてくるので、あるべき姿を考える際の大きな助けとなる。きちんと作られた経営戦略があれば、あるべき姿のかなりの部分が確定してしまうこともあるかもしれない。

 とはいえ、これらの上位情報は、その性質上、概念的・抽象的である場合が少なくない。アーキテクチャのあるべき姿を具体的にモデル化していくためには、詳細さが十分でないことがある。また、アーキテクチャとして捉えられるべき組織やITの構造について方向性を定めないまま、概念から直接業務計画やIT投資プロジェクトが決められていることも多い。

●基本方針(プリンシプル)の導入

 ビジョン、ミッション、経営戦略などの上位情報を具体的なアーキテクチャのモデルにつなぐための途中段階として有用なのは、「基本方針(プリンシプル)」の導入である。基本方針は、ビジョンやミッションを実現するために、長期に渡って組織が従う基本的な考え方やガイドラインであり、組織によって承認され、適用される。

 EAに関連する基本方針(アーキテクチャプリンシプル)だけでなく、より上位の経営についての基本方針(ビジネスプリンシプル)も存在し得る。これらはビジョン、ミッション、経営戦略をブレークダウンして導き出されたものである。EAに関連する基本方針には、ビジネスアーキテクチャの基本方針、アプリケーションアーキテクチャの基本方針などが含まれる。これらはビジネスプリンシプルの制約を受けつつ、アーキテクチャの各階層がどのような姿を目指すべきかの指針である。一つ一つの基本方針は、比較的シンプルな文章であらわされ、明確な方向性を示す。通常、基本方針は数個から多くても十数個までに制限される。それらの中でさらに優先順位がつけられることもある。

 これら複数の基本方針を組み合わせた、基本方針の集合体がEAの方向性を決定する。ひとたび基本方針が明確になれば、あるべき姿を考えるのははるかに容易となる。いきなりあるべき姿を決定しようとするのではなく、基本方針というステップを経ることが、結果的にはEA導入をスムーズに進めることにつながる場合もある。

(システムコンサルティング部 相原 慎哉)

※本稿は、みずほ情報総研が2005年10月11日に発表したものです。

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