このような流れに加え、BI市場では、ベンダーによる機能収束が進行している。例えば、EBISベンダーの多くは、Webサービスベースのプログラミング・インタフェースの提供や、さまざまな分析手法やチャート作成機能など、自社製品のカバーエリアを拡大している。
また、BIプラットフォーム・ベンダーは、使いやすさを改善し、レポート機能などのスイート機能を追加している。さらに、既存製品の拡張だけではなく、ベンダーの合併によって、総合的なカバー範囲を広げる動きもあり、BIの要素機能の特徴を正しく理解し、ニーズにあった機能を提供する製品を正しく選択する必要性が一層増している。
パワーユーザーかライトユーザーか
BIツールを選定するにあたり、どのようなユーザーが利用し、その戦略的な価値、あるいはビジネス上のインパクトはどの程度のものかということを考慮に入れる必要がある。
これまでの一般的なBIツールのユーザーは、企画部門やシステム部門の分析担当者という、比較的少ないパワーユーザーと言われる人々が中心だった。こうしたユーザーは、多種多様な機能を駆使したデータ分析から、日々の業務プロセスからは直接見つけられない事実や仮説を発見して、企業の意思決定に貢献してきた。
一方でラインマネージャ向けには、帳票を中心とした、ある程度定型の情報が提供され、毎日の業務上の判断に役立てられてきた。
一方、最近の動向としては、営業担当者などのよりビジネスの現場に近い社員に対してデータ分析のための仕組みを提供するという動きが見受けられるようになっている。ビジネス現場でのデータ活用は、市場の急速な変化や多様化に対応するために非常に有効であると考えられる。
しかし、これまでのBIの中心的なユーザーと異なり、一般社員にとってデータ分析は日常業務の一部でしかなく、複雑な分析モデルや多機能のツールに精通するだけの余裕はない。また、人数的にも数百から場合によっては数千人が利用することになるために、1ユーザーあたりの費用は、パワーユーザーと比較した場合、低く抑えるべきであることが多い。
このようなユーザー特性を考慮に入れず、これまでパワーユーザーが利用し、ある程度の成功を収めたツールを全社展開してしまった場合、多くのユーザーが機能を使いこなせず、宝の持ち腐れになってしまう可能性が極めて高い。また、仮にある程度使いこなせたとしても、投資に見合う十分な効果が得られるかどうかについては、懐疑的である。
BIツールの幅広い社員層への導入では、必要かつ十分な機能をカバーしたコンパクトかつリーズナブルな製品が求められており、市場では、Excelと同レベルの使い勝手でさまざまな切り口でデータを集計することが1つの目標となっている。
最後に、BIツールの選定におけるポイントを以下にまとめる。
- BIツールで提供されている機能要素の特徴を正しく理解し、選択する。
- BIを活用するユーザー層の戦略的価値と、スキルレベルを考慮に入れ、機能・価格を検討する。
堀内 秀明(Hideaki Horiuchi)
ガートナーリサーチ ソフトウェアグループ ビジネスインテリジェンス担当主席アナリスト日本国内のデータベース・ソフトウェアなどのソフトウェア市場動向・将来予測・競合分析ならびに、ビジネスインテリジェンス・システムの製品選定、システム導入に関するアドバイスを担当。
ガートナー ジャパン入社以前は、国内大手SIベンダーにて10年間、製品調査、システム提案・構築ならびに技術支援に従事。
ガートナーが最新の情報と提言を結集するイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」(2005年11月30日〜12月2日)にて『インフォメーション・アキテクチャーの役割と重要性』をテーマに講演を行うほか、2006年の「ビジネス・インテリジェンス・サミット 2006」(2月22〜23日)では、チェアパーソンを務める。