第6回 全体のバランスを考慮する〜BIフレームワークの重要性〜

堀内秀明(ガートナー ジャパン) 2006年01月05日 11時06分

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 本連載では、これからBI(ビジネスインテリジェンス)に取り組む企業、あるいは既にBIに取り組んでいるものの、十分な成果が得られていないと感じている企業が、気をつけるべきポイントについて、データ品質、インフラ、ツール、組織という観点で解説してきた。こうした個別の考慮点を念頭におき、対処していくことはもちろん大切なことである。

 しかし、BIから長期的に大きな成果を得るためには、個別の考慮点について場当たり的に対応するのではなく、各考慮点同士の全体的な整合性(バランス)を取る必要がある。全体的な整合性を取るためには、BIを取り巻く全体像を認識したうえで、各要素同士の関係を理解する必要がある。そのためには、フレームワークを定義することが、非常に重要かつ有効である。連載最終回となる今回は、ガートナーの提唱するBIフレームワークについて解説する。

図・BIフレームワーク
(出典)ガートナー


 ガートナーの提唱するBIフレームワークは、インフラストラクチャ、アプリケーション/機能、組織/プロセス、戦略の4層から成り立っており、それぞれのレベルに求められる価値や想定されるリスクは異なる。

インフラストラクチャ層

 インフラストラクチャ層は、データの抽出・保持・配布が主な役割であり、対応システムの増減や分析ニーズの変化に柔軟に対応可能な効率性が求められる。具体的なテクノロジー要素としては、データウェアハウス、オペレーショナルデータストア(ODS)、データ抽出・変換・ロード(ETL)、データ品質、メタデータ管理などが含まれる。

 第3回でも述べたが、多くのBIに関する取り組みでは、短期的な効果を期待し、場当たり的に独立型データマートを構築しがちであるが、柔軟性や拡張性に欠け、いわゆる“Single Version of Truth”の実現も困難になる。

アプリケーション/機能層

 アプリケーション/機能層では、データの分析を行うことによる、目に見える効果が期待される。具体的なテクノロジー要素としては、BIプラットフォームやEBIS(Enterprise BI Suite)といったいわゆるBIツールや、BIプラットフォーム上に構築されるBIアプリケーション、さらには、分析機能を有するビジネスアプリケーションなどが含まれる。

 ユーザー要件は極めて幅が広く、1つのツールではそれらの要件を経済効率良くサポートできないため、大規模企業では複数のBIツールとアプリケーションの組み合わせが必要になる。しかし、ユーザー要件にあわせ、プロジェクトごとに場当たり的にツールを導入してしまうと、同一機能を提供するツールの重複を招き、サポート・コスト増に通じる。

組織/プロセス層

 組織/プロセス層では、誰が、どのようにBIを利用するかという活用手段を定義する。

 以下のような評価を行い、組織の特性やBIに関する成熟度を理解することによって、どのようなBI機能が必要で、どのように展開していくべきかが決まる。

  • BIの主要な狙いは何か。フロント・オフィスの業績向上への準備ができているのか、あるいはまずバック・オフィスの業務を整理する必要があるのか
  • 現在保有しているBIに関するスキルは何で、不足しているスキルは何か
  • どのようなタイプのユーザーを想定するのか。また、それぞれのユーザー層に提供するサービスは、どの程度ユーザー層固有にすべきか
  • 社内環境は、BIチーム(BIコンピテンシ・センター)を組成し、部門横断でスキルを共有することを許しているか
  • 業績管理は、どの程度成熟しているのか。バランス・スコアカードのような一般的な手法への準備ができているのか、あるいは、まず基本的なプランニングとコントロールのプロセスを改善する必要があるのか

 分析を行い判断を下すのは、やはり人間である。企業の戦略を理解し、適切なデータ分析を行い、短期的に採用する戦術を決定できるスキルの育成が重要である。

戦略層

 最上位に位置付けられるのは戦略層であり、企業競争力の向上のために、ビジネス上の目標に直結し、全体整合性の取れた指標や分析結果が要求される。戦略層で想定した分析に必要なデータをもれなく、適切なタイミングで入手するためには、BIフレームワークでは層として明示的に定義されていないが、インフラストラクチャ層の下位に位置する業務系システムでも、その後で分析されるということが意識されることが理想的である。

まとめ

 BIがビジネスにとって不可欠であるということは、疑いようのない事実である。しかしながら、第1回にも述べた通りBI導入より期待通り、あるいはそれ以上の成果を得たという企業は少ない。

 データウェアハウス構築や大規模BI導入などは、費用対効果の数値化が難しく、取り組みに消極的になりがちであり、比較的単純なデータ活用の仕組みは、費用対効果を見積もりやすいが、データ・ソースや利用部門の拡大、利用目的の多角化などに柔軟に対応することは困難である。

 長期的にBIイニシアティブを成功させ、期待通り、あるいはそれ以上の効果を得るために、ガートナーの提唱するBIのフレームワークを活用し、自社の現状にあわせ、各層の内部および各層をまたがって最大の効果が得られるようにすべきである。

堀内 秀明(Hideaki Horiuchi)
ガートナーリサーチ ソフトウェアグループ ビジネスインテリジェンス担当主席アナリスト
日本国内のデータベース・ソフトウェアなどのソフトウェア市場動向・将来予測・競合分析ならびに、ビジネスインテリジェンス・システムの製品選定、システム導入に関するアドバイスを担当。
ガートナー ジャパン入社以前は、国内大手SIベンダーにて10年間、製品調査、システム提案・構築ならびに技術支援に従事。
ガートナーが最新の情報と提言を結集するイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2005」(2005年11月30日〜12月2日)にて『インフォメーション・アキテクチャーの役割と重要性』をテーマに講演を行うほか、2006年の「ビジネス・インテリジェンス・サミット 2006」(2月22〜23日)では、チェアパーソンを務める。

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