2005年はアーキテクチャの混在に気づいた年
2005年は、Itanium2プロセッサ、Xeonプロセッサを含めて64ビット化がかなり浸透した年でした。まさに「64ビット時代の始まりの年」と言えます。景気も良くなり、企業のIT投資も積極的だったため、当社以外の企業を含めサーバ市場は伸びました。
お客様はバブル時代に相当なIT投資をしましたが、ふと振り返ってみると大変なことが起きていると気づきました。それはサーバやOS、あるいはアプリケーションが断片的になっている点です。様々なアーキテクチャが混ざり合い、いろんな部署で勝手に動いています。投資したものが稼動してはいるのですが、非常に効率が悪い。そこでEA(エンタープライズアーキテクチャ)という言葉が出始め、SOA(サービス指向アーキテクチャ)が注目されました。これまでのIT投資によって起こった断片化をいかにして作り変え、将来的に柔軟性を持って対応すべきか、ということに対して意識が高まった年と言えます。
実績が広く認知され始めたItanium
インテルにとって2005年のハイライトは何と言ってもItaniumです。Itaniumは、2001年5月29日に発表したプロセッサで、それから約4年が経過しました。当時、CISCとRISCの論争が始まり、スーパースカラやスーパーパイプラインといったアーキテクチャに関するディスカッションバトルもありました。Itaniumアーキテクチャは、もともと将来の企業ニーズを考えた時、大量のデータを大量に処理するために新しいアーキテクチャが必要になると判断し、1990年代後半からHewlett-Packardと共同で開発したアーキテクチャです。2001年に市場に投入されたItaniumは優れたアーキテクチャを持っていましたが、新しいがゆえに実績がありませんでした。それが2005年になり、ようやくITマネージャーにも認めてもらえるようになったと強く感じています。
HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の分野でも、大学の先生やお客様から直接Itaniumを指名していただくようになり、その実績が広く認知されました。IDCの調査によると、日本のサーバ市場において2005年第3四半期にItanium 2アーキテクチャのサーバの出荷金額が、他のアーキテクチャを抜いたと報告されています。世界の中で特に日本市場が大きな変化を見せており、実に画期的な年だったと思います。
2006年はバーチャライゼーション
2006年のキーワードのひとつは「インテル・バーチャライゼーション・テクノロジ(VT)」です。お客様は様々なサーバをお持ちですが、それぞれのサーバはCPU性能のヘッドルームを持っており、ほとんど使われず待機状態にあります。これではリソースの無駄遣いです。VTは、例えば複数のサーバを仮想的に統合し、利用状況に応じてリソースをダイナミックに割り当てることを可能にするテクノロジです。断片化しているリソースを本当の意味で効率よく活用し、個々のCPUを100%近く使えるようにします。
ITマネージャーは複数のサーバを統合できるため、管理とメンテナンスが容易になります。日本企業のIT投資の70%から80%が運用保守に費やされていると言われますが、本来はそれだけの割合を戦略的なIT投資に回すべきです。インテルでは、VTを使ってこの割合を逆転させたいと考えています。また、SOAに関しても、VTによって順応性の高いサービスをエンドユーザーに提供できるようになります。
仮想化技術自体は特別新しいテクノロジではありませんが、VTはハードウェアレベルで仮想化をサポートします。CPUやチップセットが仮想化機能を持つということです。ハードウェアレベルで仮想化を行うことで、ソフトウェアによる仮想化のオーバーヘッドを最小化することができ、信頼性も高められます。
デュアルコアItanium 2は2006年中頃
2つめのキーワードは「デュアルコア」です。インテルは2006年、Itaniumシリーズとしては初となるデュアルコア製品(開発コード名:Montecito)を投入します。パフォーマンスそのものはもちろん、消費電力あたりの性能も期待できる製品です。また、システムの可用性も進化します。デュアルコアはVTとたいへん相性が良いという利点があります。VTはCPUの使用効率を高めるだけではなく、信頼性、可用性にも効力を発揮しますから、パフォーマンスと可用性の両方を引き上げることができます。
インテルは、業界各社と共同で2005年9月に「Itanium Solution Alliance(ISA)」を発足させました。ワールドワイドでItaniumの導入を加速させるためのアライアンスであり、ハードウェアだけでなく、アプリケーション、OS、ミドルウェア等を含めてさらに洗練されたItaniumソリューションを提供していきます。ISAを通してItaniumを中心としたエコシステムを大きく発展させることを目的としています。
2006年後半のWoodcrestに注目
Xeonサーバについては、ミッドからローエンドにかけて相変わらず堅調でした。市場の伸びとともにXeonサーバも伸びており、予定通りに推移したと捉えています。2006年以降、NetBurstとCentrinoの長所が融合されたアーキテクチャがXeonに搭載されるようになります。その時には、Xeonのコアは4つあるいはそれ以上となる可能性があります。これによって消費電力が大きく下がり、パフォーマンスはさらに伸びます。消費電力あたりのパフォーマンスは従来製品と比べて3倍以上となります。
性能が高ければ良かった時代はもう終わりました。お客様からは、消費電力と熱についての質問を受けることが多くなっており、今後インテルは、性能を高めつつ消費電力を抑えること、あるいは消費電力の低減そのものにさらに注力します。2006年後半に投入する「Woodcrest」は、低消費電力でありながら非常に性能が高く、私がたいへん期待している製品です。
新しいインテルのプラットフォーム元年
2006年は、サーバが加速度的にマルチコアに移行していきます。そこにVTを載せてインテルプラットフォームの付加価値を高めていきます。ITインフラが社会基盤となり、ライフラインとなりつつある中で、ITインフラに柔軟性と拡張性を持たせ、低コストで構築できるソリューションをプラットフォームとして提供することが2006年のインテルの目標です。2006年から、インテルは新しいインテルとなります。インテルはメモリメーカーとしてスタートしましたが、1985年にDRAMから撤退し、マイクロプロセッサにフォーカスしました。これはインテルにとって大きな変革となりましたが、2006年には新たな変革が起こります。つまりインテルは、プラットフォームの会社に生まれ変わろうとしているのです。社会基盤となったITインフラに対して、プラットフォームソリューションを提供するのが新しいインテルです。2006年は、まさにプラットフォーム元年です。
今後、VTのようにインテルからは様々なテクノロジが「T's」として続々と登場します。「インテル・アクティブ・マネジメント・テクノロジ(AMT)」はそのひとつです。AMTは、管理性とセキュリティを高めるための、サーバからクライアントまでのエンドツーエンドソリューションです。例えば、シャットダウンしたクライアントであってもLANにさえつながっていればBIOSのアップデートが可能です。このAMTはVTと相性が良く、VTによってAMTが隔離できるため、攻撃を防ぐことができます。2006年はインテルの2つの「T」にご注目ください。ビジネス向けデスクトップのプラットフォーム「Averill」にはVTとAMTが搭載されます。