ERPの普及やコンプライアンスへの要請などから、企業の「ビジネスプロセス管理」に対する関心は高まっている。ドイツに本社を置くIDSシェアーは、ITによるビジネスプロセス管理(BPM)の分野において1984年にビジネスを開始し、「ARIS」(ARchitecture of Integrated Information System)と呼ばれるビジネスプロセス管理のコンセプトと同名のツール群を多くの企業に提供している。同社の創設者であり現会長のAugust-Wilhelm Scheer氏に、企業におけるBPMの重要性について聞いた。
--現在の日本市場をどのように見ていますか。
私が初めて来日したのは9年前でした。以後のIDSシェアーの日本での発展には、非常に満足しています。当初のビジネスは、SAPの実装サービスがほとんどでしたが、今では売り上げの6割近くが企業をビジネスプロセス指向にオーガナイズするビジネスに変化しています。日本では、「業務の一連の流れに着目して最適化を行い、継続的に改善していく」というBPMの本質と共に、弊社の方法論やツールが受け入れられていると感じています。日本の大手IT企業は、我々と同じ方向性で物事を考えているのではないでしょうか。
--近年、BPMを取り巻く市場の意識に特に大きな変化はありましたか。
例えば、1年という短いスパンで見れば、さほど大きな変化はないのかもしれません。というのも、1年前には、BPMという概念が広く社会に受け入れられていたからです。ただ、それがさらに広く一般に認められるようになったとは言えるでしょう。コンサルティングの大手がBPMをこぞって取り上げ、ソフトウェア会社もBPMを語るようになってきました。今や「BPM」は世界的な流行語となっています。
--今回、日本で行う講演の内容はどのようなものになりますか。
講演のタイトルは「Agility through Standards(標準化あっての迅速経営)」というものです。アジリティ、つまり「迅速経営」という言葉は、環境に何らかの変化が起こった場合に、企業が迅速かつ柔軟に対応することを意味します。一見、これは「スタンダーダイゼーション(標準化)」という言葉と相反する概念にも見えます。標準化と聞くと、1つのベストプラクティスを、あらゆる地域や部門に適用し、それを使い続けるということを示唆しているように思えるからです。このように「標準化」と「柔軟性」は両立しないというイメージを持たれがちですが、実は、この2つを組み合わせることが重要なのです。
この問題は、例えば、育児と通じるところがあるかもしれません。子供を育てる際に、本人の自由を尊重する柔軟さは必要ですが、ある程度のルールや枠組み(フレームワーク)を与えておくことも重要です。そうしなければ、その子は無鉄砲で無責任な人間に育ってしまいます。同様に、どのような会社でも、構造化や標準化と、それに対する自由度や柔軟性をどこまで認めるかというバランスが極めて重要なのです。今回のセミナーでは、そのバランスをとりつつ、1つのフレームワークを作っていく方法について、事例と共に説明します。
SOAにおいては、標準化されたサービスのインターフェースやデータの表現方法などが、フレキシブルなアーキテクチャの前提条件となっています。つまり、アジリティと標準化は対立する概念ではないのです。