コンプライアンスを機会ととらえ「プロセス指向企業」への転換を--IDSシェアー - (page 2)

柴田克己(編集部)

2006-01-26 18:10

--SOAとARISの関係について、もう少し詳しく説明してください。

 SOAで言う「サービス」は、小さな単位の「プロセス」を記述したものです。エンド・ツー・エンドの完全なビジネスプロセスを開発するためには、各種のサービスを1つのソリューションとして統合する必要があります。統合の過程では、各種のサービスと同時に、ビジネス指向のプロセスが必要になります。そのプロセスが、各種のサービスを統合するための青写真となるのです。

 SAPを例をとれば、SAPのサービスは、ARISの方法論やツールを使って、SAPのデベロッパーが開発します。一方のユーザーは、自分自身で思いついた新しいビジネスプロセスのアイデアを、自分の一番分かりやすい方法で記述します。最終的に、ユーザーはSAPのサービスドキュメントの中から、自分たちのビジネスプロセスに適用できるサービスを探し、それらを自由に組み合わせて1つのソリューションにすることができます。ARISを利用するメリットは、その作業が極めて容易になる点です。ARISでは、各ベンダーが提供するプラットフォームとのインターフェースを提供しています。

--迅速に変化に対応できる基盤を作り、競争力を上げるという観点でのBPM導入が進む一方で、日本ではコンプライアンスへの取り組みの一環としてビジネスプロセスの見直しが避けられないという現状もあります。コンプライアンスが主導するBPMについての考えを聞かせてください。

 SOX法のような要件は、企業に対して新たなタッチポイントが生まれるという点で、我々にとっては新たなビジネスチャンスです。これまで主に話をしてきた、CIOやロジスティクス部門のマネージャーだけでなく、企業のCFOやCEOと話をするためのきっかけとなるからです。

 日本においては、まず最初にビジネスプロセスを変革することからはじめ、後に、コンプライアンスのための製品を導入するという展開をしている企業が多くあります。日本のある大手総合商社はプロセスモデルの導入というアプローチから入ってSAPの実装を行い、その後に、同じプロセスモデルをコンプライアンスやSOX法のサーティフィケーションのためのインプリメントとして使いました。このアプローチは、コンプライアンスをトータルなBPMの一環として実現できたという点で大きなメリットがありました。ARISのプラットフォームでは、ビジネスプロセスをコンプライアンスのマネジメントに活用できる、特別なエクステンションを用意しています。

 今、多くの企業はBPMに統合的なアプローチが必要だと言うことを深く理解しています。この状況は、10年から15年ほど前に、統合型のアプリケーションソフトが出た時とちょっと似ているかもしれません。当時のねらいは、さまざまな業務の機能を統合することでした。現在は、ビジネスプロセスのアーキテクチャやリスク管理、コンプライアンス管理、SOA、SAPの導入といった要件のすべてを、ひとつの統合的なアプローチで実現することが求められているのではないでしょうか。われわれが、競合他社に勝ち、大規模なプロジェクトを受注できているのも、顧客がBPMのパートナーを一元化したいと考えているためだと思います。

--コンプライアンスをきっかけにBPMを検討している日本の企業に対して、何かアドバイスはありますか。

 企業として「法令を守らなければいけない」という受動的な理由からプロセスを改善し、それにまつわるドキュメントを作ったとしても、のちのち、その作業から生まれたプロセスやプロセス指向の考え方を他のオペレーションにも広げ、企業をプロセス指向に転換することは可能です。しかし、ここはとらえ方を変え、業務上のプロセスすべてを改善し、刷新することが、後々、大きなベネフィットを生むのだと考えることが必要だと思います。コンプライアンスの要件をチャンスとして活用し、企業のプロセス改善につなげていってほしいと思っています。

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