PCサーバの仮想化
ここまで、メインフレームの仮想化技術を中心に、ハードウェアでの仮想化機構対応が重要なポイントであることを説明してきた。UNIX系サーバの中には、すでにメインフレームと同レベルの機能を実現しているものもあるが、PCサーバの現状はどうだろうか。
残念ながらまだ基本的な部分でメインフレームに追いつけていないところも多々あり、やっとメインフレームで言う第2世代が見え始めたところぐらいだろう。
性能面から見ると、基幹システムなどでも実用に耐えるVMシステムは、メインフレームの第2世代以降、「ハードウェアによる高速化アシスト機構」が必須だ。しかしPCサーバでは、まだ製品化されていない。
また、もともとPCサーバはVMを意識したアーキテクチャとなっていないために、たとえば、コンピュータシステムに影響を与えるためVM上で直接実行できない命令にもかかわらず、シミュレーションの契機となる割り込みが発生せず、直接実行されてしまう命令があるなどの、基本アーキテクチャ上の問題もある。現在の仮想化ソフトはこの問題を回避するため、VM-OSの命令を割込みが発生するように他の命令に書き換えてしまうなど、さまざまなな苦肉の対応策を行っている。
しかし、ここにきてPCサーバの仮想化技術が脚光を浴び始め、各プロセッサベンダーが、プロセッサやチップセットレベルでの仮想化対応を表明、日立仮想化機構をはじめとし、各社の仮想化ソフトウェアもそのプロセッサ対応を表明している。これにより、VM-OSの命令を書き換えることなくシステムに影響を及ぼす命令をシミュレーションできたり、入出力命令などを高速に処理できるなど、加速的な進化が期待されている。
さらなる仮想化への挑戦
それでは、メインフレームの後追いがいつまでも続くかというと、決してそのようなことはないだろう。PCサーバはメインフレームですでに実用化された技術を踏まえ、さらに進化を続けていくと考えられる。
冒頭、仮想化により期待されるメリットとして説明した、ベンダーや製品仕様を意識させない仮想計算機も、今後の重要なテーマとなってくるであろう。分散化されたオープンシステムで、どのハードウェア上でも同じ開発・実行環境が提供され、利用者はプラットフォーム差を意識する必要がなくなるメリットはとても大きい。
さらに、オープンソースの仮想化ソフトウェア「Xen」でのLive Relocation機能のように、動作中のVMを、稼動させたまま別のPCサーバへ移動させ、ダイナミックなロードバランシングが可能となるなど、多くの新しい試みがされている。
このように、メインフレーム時代にはなかった、オープンシステムの時代に合った複数のサーバ間での仮想化、さらにはハードウェアレベルからサービスレベルまで広範囲に渡った仮想化など、さらに大きなメリットが享受できるようになるだろう。