共通の基準作りが最優先
この日のイベントでは、複数の参加者が、まず最初にシステムのパフォーマンスを測定するための有用な基準を作る必要があるとの考えで一致した。こうした共通の基準を設けることで、IT業界はシステムの処理能力と電力消費量を天秤にかけ、電力効率という問題の深刻さや各種の解決策の有効性を判断できるようになる。
「大半の企業は、製品が実現しているパフォーマンスを客観的に測定できるようにすることが最優先課題であるという考えに同意している」と、Jonathan Koomeyはインタビューの中で語った。同氏はStanford UniversityとLawrence Berkeley National Laboratoryで働く、コンピュータの消費電力についての専門家だ。Koomeyは、サーバメーカー各社やEPAなどとともに議論を行う中で、こういった測定基準が生み出されることを期待している。「今から1年後には、少なくとも測定基準の草案ができていることを願っている」(Koomey)
しかし、この日講演を行った参加者は、ほとんどがパフォーマンス測定のプロセスを提案することに乗り気ではなく、何人かはそれが難しい問題であることを認めた。まず、自社製品に有利なテストを選ぼうとする企業が出てくることは避けられない。また、プロセッサからストレージ、ネットワークに至るまでの個々の製品すべてのパフォーマンスを示せるテストを決めるのは容易なことではない。
低消費電力プロセッサを開発する新興企業P.A. Semiのアーキテクチャ部門バイスプレジデントPeter Bannonは、「幅広い製品に対応し、かつ日常的な実用性を備えた簡単なものを決定することは、困難な作業となるだろう」と語った。
また、SunのPapadopoulosも、自動車の燃費のように単純に見えるものでさえ、実際に測定したり比較したりしようとすると一筋縄ではいかないと述べた。たとえば、単純に1ガロンあたりの走行距離でみると、オートバイはSUVよりも優れているが、しかし全体としては乗員数の多いSUVのほうがオートバイよりもエネルギー効率が高い。ただし、SUVにしても必ず定員一杯の状態で走っているわけではないことから、どれほど活用されているかという点も考慮に入れなくてはならないという。
この問題に関連して、何十年も前に考案され、最近になって人気が復活してきた解決策がある。それは液体冷却システムで、Hewlett-PackardやEgenera、Silicon Graphics、IBMの各社はいずれも自社のハードウェアに液体冷却システムのオプションを追加している。
「液体冷却システムの人気が復活している」と、データセンター設計の専門家Sullivanは言う。「効率の点でいうと、プロセッサと液体冷却装置の距離が近いほど、エネルギー効率は高まる」(Sullivan)
プロセッサの改良
プロセッサの設計者らは消費電力を減らす手法の開発に取り組んでいる。プロセッサは、新たな製造プロセスがリーク電流の増加につながることなども手伝って、大きな問題になっている。
IntelのMichael Patterson(Digital Enterprise Group、サーマルエンジニア)によると、たとえば同社の現行Xeonチップ「Irwindale」の消費電力は110ワットだが、これが次に登場する「Woodcrest」になると大幅に効率が改善され、80ワットまで削減されるという。Woodcrestは、2006年後半に登場予定のデュアルコアプロセッサで、モバイル用の「Pentium M」プロセッサのアーキテクチャを採用し、65ナノメートルの新しい製造プロセスでつくられる(Irwindaleは90ナノメートルプロセス)。
さらに、Intelは先週、ハイエンドサーバ向けの「Itanium」プロセッサについて次の「Montecito」モデルでは消費電力が100ワットと、現行モデルに比べて30ワットも少なくなると述べていた。
また、プロセッサの次に問題になるのはメモリの部分で、Papadopoulosによると2008年までにはコンピュータ全体が消費する電力の半分以上がメモリに使われるようになるという。「メモリはいくらでも電気を使う」と同氏は述べ、さらにDDR2メモリや次世代の完全バッファ型DIMMへの移行に伴って、この問題は一層深刻化するだろうとした。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ