--2004年ごろから注目を集める検疫ネットワークという概念と同様のことを実現するものとして、トレンドマイクロではアプライアンスの「Trend Micro Network VirusWall」を提供していますが、販売状況はどうですか。
当初の予想を下回っています。ただ、最近では大型案件が増えつつある。大型案件というのは、全国規模でチェーン店を展開する企業が、一括導入したいというものです。
この企業は、東京に本社があって、本社内のセキュリティ対策は情報システム部門がいつでも見ています。しかし、地方のチェーン店の末端まではなかなか目が行き届かない。そこで、Network VirusWallをチェーン店に導入することで、全体としてネットワークを守ることができるというわけです。
また、Network VirusWallは中国でもよく売れています。現在多くの日本企業が中国に進出していますが、中国の場合、ITガバナンスが日本ほど整備されていないところがあり、デスクトップPCのウイルス対策が日本と同様には期待できない。そこで、先ほど話したチェーン店の案件と同様に、Network VirusWallを中国の支社に設置することで、セキュリティ対策を講じていますね。
--現在、セキュリティ対策業界では、専用ハードウェアの上に専用OSをのせたアプライアンスを市場に投入するベンダーが多いと思います。
トレンドマイクロでもNetwork VirusWallなどアプライアンス提供していますし、アプライアンスで対応することは傾向としては間違っていないと思います。
ただ、セキュリティ製品というのは、個々の機能で勝負する時代ではないと思っています。トレンドマイクロでは、ウイルス対策をライフサイクルで統合的に管理するコンセプトとして「TREND MICRO Enterprise Protection Strategy」(TMEPS)を打ち出しています。これは、OSの脆弱性を診断するなどしてウイルスが感染する原因をなくす「脆弱性予防」、ウイルスの大規模感染を予防する「大規模感染予防」、ウイルスやスパイウェアのパターンファイルを配信して検出する「ウイルス検出」、もし大規模に感染してもシステムを復旧させる「回復/障害寝台」というプロセスからなります。ウイルス対策については、これらのプロセスをきちんと回さないと対応できないという考えから、このようなコンセプトを打ち出し、TMEPSに対応した製品やサービスを提供しています。
--同業他社では、情報システム部門が開発したウェブアプリケーションの脆弱性を診断するというサービスを展開していますが、トレンドマイクロではそういったサービスは提供しないのでしょうか。
そういったサービスについては、われわれはパートナーに任せるという方向性を取っています。今言われたウェブアプリケーションの脆弱性診断などは、SIerが力を発揮すべきところだと考えているからです。トレンドマイクロはソフトウェアの企業であり、ソフトウェアというコアコンピタンスに力を集中させるという戦略を取っています。