米国でアナウンスが行われた「Office Live」も、ビジネスに必要となる機能を「サービス」として提供することで、こうしたOffice System構想を補完するものとなるようだ。現時点で明らかになっているのは、主に中堅中小規模企業に対し、ドメインの取得やサーバホスティング、さらにSharePointの機能をASPとして提供するといった内容である。
沼本氏は、「Office LiveとOfficeは、“どちらか一方を選択する”という関係にはならない。ユーザーのニーズはそれほど単純なものではなく、選択肢が広がるという以上に、どちらも必要だと考える人も多いはず。現時点で明らかにできることは少ないが、双方を有機的に連動させてバリューアップを図っていくことだけは間違いない」と語る。
Office System構想に基づく機能強化は、Office 12の登場以降も継続されるというわけだ。
Officeを総合的なシステムとして発展させていく一方で、ユーザーにとってのフロントエンドとなる各アプリケーションの強化もマイクロソフトにとっては、重要なミッションである。ユーザーが新しいフロントエンドを使うことで、その機能をフルに生かすバックエンドに対するニーズが生まれ、バックエンドが強化されることで、その機能に必要性を感じるユーザーが、フロントエンドを最新のものにしたいと考える。Office Systemとしての進化と、各アプリケーションの進化は、ある意味で相互依存の関係であるとも言えるだろう。
新たなUIが採用された理由
デスクトップアプリケーションとしてのOffice 12に関するトピックのひとつは、Word、Excel、PowerPointといったポピュラーな製品に、新しいユーザーインターフェース(UI)が導入される点だ。
従来のメニューバーやツールバーに代わって登場するのは、タブ形式の「リボン」と呼ばれるUIだ。同社は新たに導入されたリボンを「目的(結果)指向のUI」と呼んでいる。
これまでは、メニューバー上の各メニューをクリックすると、その下に選択できる操作の一覧がずらりと表示され、場合によってはさらに深い階層へとドリルダウンしていく形で、ユーザーが必要な機能を探していた。Office 12から登場するリボンでは、メニューバーのかわりに目的別に分類されたタブが表示される。ユーザーがタブをクリックすると、その下のパネルスペースに目的に応じた機能を呼び出すためのボタンやドロップダウンメニューなどが一覧で表示されるようになる。
この新たなUIは、バージョンアップするごとに増え続けてきた各アプリケーションの機能を、これまでよりも効果的にユーザーに提示するためのものだという。
「Officeの各アプリケーションは、ユーザーニーズに応じて多くの機能を実装してきた。Office 12でも新たな機能が追加され、また、今後も機能強化は続けられていく。では、その新たな機能をユーザーに使ってもらうために、どうすればいいかを考えたとき、これまでのモデルに準じてツールバーを増やしたとしても、それは効果的ではない。新しいユーザーモデルを作ることによって、すでに実装されている機能はもちろん、今後も追加される機能を使いやすく提示できるようにすることが狙いだ」(沼本氏)
ユーザビリティの向上を目指した新たなUIの導入は、新バージョンへの移行を検討するユーザーにとって、ひとつのネガティブファクターとなる危険性もはらむ。これまでのバージョンのOfficeで慣れ親しんだ操作系が変更されるのであれば、ユーザーは新たなOfficeを使うための方法論を再習得しなければならないと考えるかもしれない。
だが、マイクロソフトでは新たなUIによってユーザーが享受するメリットのほうが、新たな操作方法の習得にかかるコストよりも大幅に勝ると考えている。そうした自信の裏には、UIデザインに当たり、十分な量のユーザーフィードバックを元にしているという事実がある。Office 2003には、ユーザーの許可を得た上で、Officeの利用状況に関する情報をマイクロソフトへとフィードバックする「カスタマエクスペリエンス向上プログラム」と呼ばれる機能が実装されている。このプログラムによってフィードバックされた大量のデータと、従来から続けられてきたフィールドワークから得たデータを組み合わせることで、「これまでに得られたフィードバックを、定量的にも定性的にも生かしたデザインが行われている」(沼本氏)という。