AMDが想い描く「Opteronのその先」 - (page 2)

文:Stephen Shankland(CNET News.com)
編集校正:坂和敏(編集部)

2006-02-14 14:57

--それはAMDの戦略が劇的に変化するということですか。

 「はい」ともいえますし「いいえ」ともいえます。ライセンス供与というアイデアが良いのは、AMD64が信頼できる大容量クロスプラットフォームとして設計されているからです。AMD64はLinuxやMicrosoftの既存ソフトウェアと完全な互換性があるため、エコシステムはこのアイデアをサポートするものとして既に存在しているわけです。そしてAMD64ではハイエンドへの移行がスムーズに行えます。ところが、例えばItaniumの場合はこうはいきません。

 現在のAMDは、基本ハードウェアレベルで高い競争力を持っており、「素晴らしいプラットフォームを手にした今、次の一手は何なのか」と問われる段階にあると思っています。そして、個人的な意見ですが、基本となるプラットフォームを手に入れた後は、その上にありとあらゆるレベルのものを効率よく、かつ迅速に構築したいと思うものだと考えています。こういった考えや、Coherent HyperTransportのライセンス供与のようなハードウェア活用技術には、いくつかの要素があるでしょう。そして、使い勝手の良さや、信頼性を高める機能、リカバリ、仮想パーティショニングといったことについて、MicrosoftやLinuxソフトウェアのコミュニティと協力していくことになります。つまり、私にとっての戦略とは、ただのシリコンチップというレベルを超えた、業界における次のレベルに注力するということなのです。

--AMDのシリコンチップのレベルで話をさせてください。OpteronやAthlonのアーキテクチャは、以前「Hammer」と呼ばれていた「K8」の設計に基づいています。現在、K9またはHammer 2にあたるものを開発していますか。

 その質問に関しては、2つの異なる議論があります。1つは、ソフトウェアとして目にすることのできる命令セットのアーキテクチャ(「ISA」)についてです。そして、もう1つはこの命令セットをどうシリコン上に実装するかという内部アーキテクチャについてです。これら2つは別々のものです。

 例を挙げて説明しましょう。われわれが「Pacifica」(コンピュータ上で複数のOSを同時に動かすための技術)と「Presidio」(異なるプロセスが互いに干渉しないことを保証するセキュリティ技術)で実現しようとしている仮想化とセキュリティに目を向けてもらえれば、これらの技術が命令セットアーキテクチャ(ISA)を拡張したものだとわかるでしょう。そして、こういった技術を実現しようとすれば、当然最下層にあるハードウェアの変更が必要になってきます。しかし、そういったことは、既存のマイクロアーキテクチャレベルのコードを変更することでほとんど解決できます。このため、4半期ごとにトランジスタの処理能力を向上させながらも、基盤のマイクロアーキテクチャを維持しつつ新たな製造技術を改良し続けることは、ある種、AMDの製造戦略であるといえます。従って、マイクロアーキテクチャの構造は、ほとんど変わりません。

 それから、新しいコアの設計には、それまでのISAとの完全な互換性を実現している必要があります。そうすることで、その新しいコアが利用可能になった際、ユーザーが新しい拡張命令セットを使用するかどうかを選択できるようになります。なお、コアは市場セグメントにもよりますが、一般的には2〜4年間使われます。このためユーザーはその期間内であれば、システムレベルで必要となった時点でいつでも新しい拡張命令セットを使用できます。

 その際には、次世代のメモリ技術のようなものに目を向けることが可能です。新世代のコアを、新たなメモリ技術と同時に導入したいというケースもあります。また他に、現在われわれがよく聞く話として、今までと同じ基本設計を保ちながら、Intelの「FB-DIMM」(Fully-Buffered Dual Inline Memory Module)ではなくDDR2(Double Data Rate RAM)に移行したいというケースがあります。つまり、われわれのロードマップに何を望むかについて、エコシステムのパートナー企業の声に耳を傾けるということです。

 われわれには、既存のコアに改良を加えていくことと、新しいコアを議論しながら開発することの双方に関して、さまざまな選択肢があります。従って、2007年中という限られた期間においては、既存のコアに拡張機能とメモリ技術を新たに実装することが正しい答えだとわれわれは考えています。そして2007年頃には、外見上はあまり変わりませんが、新たな設計のコアを導入する予定です。

--4コア搭載プロセッサを2007年までに提供する計画もあるのでしょうか。

 あります。

--一部のアナリストは、Intelが2006年にさまざまな製品を市場に投入するのに対し、AMDは2007年前半にも同じ技術を使い続けているだろうと見ています。

 Intelがそういう「神話」づくりに成功している点はたいしたものだと思います。(笑)

 Intelが中止したプロジェクトの数は、われわれの場合よりもはるかに多いのです。私が耳にしたところでは、Intelは6〜9カ月経たないと出荷できないものを見せ、それをすでに出回っているわれわれの製品と比較するそうです。それに対して、われわれはアナリストにロードマップを示し、「どうぞご覧下さい。われわれには、処理能力を向上させた製品を4半期ごとに出荷してきた実績があります」と説明しています。また、Intelが6〜9カ月後に出荷するものを見せているのであれば、それはわれわれの2〜3歩先を行っていることになります。そして、もしIntelがAMD製品との比較に6〜9カ月後に出荷する自社製品を使わざるを得ず、またわれわれが現在手にしているものよりもその製品は競争力があると言っているとすれば、われわれがそこに至る時までに、この出荷のギャップは現在の出荷のギャップと変わらないはずです。ということで、Intelには、実際に市場に投入するものを示して、こうした状況を変えてほしいと思っています。

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