「オープン」で先行するStarSuite
MS Officeのオルタナティブとしての役割を明確に打ち出しているStarSuiteだが、あらゆる面での「オープン化」が進む現在の情報環境においては、先行している面も多い。
例えば、StarSuiteは、Windowsだけでなく、Solaris、Linux上でも動作する。さらに、OpenOffice.orgから派生したMac OS X版も存在する。Solarisを擁するサンにとって、クロスプラットフォームで互換性の高いオフィスソフトは、戦略上重要な意味を持つ。同社では、Solarisをベースとしたシンクライアントソリューションである「Sun Ray」を推進しているが、高松氏によれば、Sun Rayの導入ユーザーの中にも、バンドルされていた旧バージョンのStarSuiteを8へアップデートしたいという要望が多いという。
また、MS Office 12で新たに搭載される「PDF」の書き出し機能については、StarSuiteではより早期に実現されていた。Impressでは、プレゼンテーションのFlash形式での書き出しにも対応している。
そして、StarSuite 8の標準ファイルフォーマットである「OpenDocument for Office Applications」(ODF)は、OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)により標準化されたものであり、すでにISOへの提出が行われている。サン以外にも、IBMやノベルといったベンダーがODFを支持しており、海外のいくつかの政府や公共機関などからも支持を集めている。2005年9月に、米国マサチューセッツ州が公式文書のフォーマットをODFとする方針を発表し、話題を呼んだのも記憶に新しい。
政治的な背景はもとより、標準化されたオープンなファイルフォーマットがもたらす技術的なメリットは大きい。長い将来にわたって、ドキュメントの可視性が保たれることに加え、アプリケーションによって作られたデータを、ODFをサポートするあらゆるシステムで容易に再利用することが可能になる。例えば、IBMは同社のクライアント製品である「Workplace」の最新版でODFをサポートするほか、ジャストシステムのワープロソフトである「一太郎」も今夏にODFの入出力に対応することを明らかにしている。
マイクロソフトが、Office 12で採用するXMLベースのファイルフォーマットである「Microsoft Office Open XML」をECMA Internationalに提出し、標準化の作業を進めている背景には、日に日に大きくなる、オフィス文書フォーマットのオープン化を求める声に応えるという側面もあるだろう。
サンも、こうしたマイクロソフトの動きには注目している。「StarSuiteとしては、これまでもMS Office 2003のXML形式の読み書きに対応し、互換性の向上を目指してきた。今後も、マイクロソフトのサポートするXMLに対応していくという方向性に変更はない」(石村氏)
今後、ODFとOffice Open XMLの関係がどのようなものになるかについては予断を許さないが、あらゆるオフィス文書のファイルフォーマットがオープンな標準ベースのものとなっていくことは間違いない。
MS Officeの低コストな「オルタナティブ」として進化を続けてきたStarSuiteは、オープン化の流れの中で、それ自身、改めて評価を受けるべき時機を迎えたと言えそうだ。