“SOAありき”でない取り組みが重要とガートナーのアナリスト

山下竜大(編集部) 2006年02月21日 07時23分

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 SOA(サービス指向アーキテクチャ)における可能性は、すでに大企業だけでなく、中堅・中小企業においても大きな期待が寄せられている。特に、市場における競争の激しい企業やビジネスモデルが常に変化する業種などにおいては、規模の大小に関わらず、SOAに基づいたシステム構築が最も効果的な手法であることは間違いない。

 「SOAの実装で先行しているのは通信業界。すでに多くのシステム構築でSOAが実装フェーズに入っている。“何ができて、何ができない”というSOAの検証の時期はほぼ終了し、できることからスタートしようという段階に入っているのが日本の現状だ」と話すのはガートナージャパンのリサーチディレクターである飯島公彦氏。

「SOAはすでに実装フェーズに入った」とガートナーの飯島氏

 通信業界は、サービスメニューや課金制度の変更、企業の吸収合併などにより、ビジネスモデルやシステム構成が頻繁に変化する。また、市場における競争が激しいために、ユーザーのニーズに迅速かつ柔軟にシステムを対応できなければ競争に勝ち抜くことが難しい。SOAの実装がほかの業種よりも先行しているのはそのためだ。

 一方、米国におけるSOAの状況は日本よりも少し進んでいて、すでにシステム構築において一般的にSOAが実装され、その真価が問われるフェーズに入っている。米国市場と日本市場の差が生まれる理由のひとつは、日本市場の方が新しいテクノロジーに対して常に慎重であるということが挙げられる。

 飯島氏は、「米国はSOAの実装に対し、どちらかといえば走りながら次のことを考えるという対応をしている。特に、企業の買収や合併が頻繁に発生する中で、システム統合をいかに実現するかを考える必要があり、利用できるテクノロジーはいち早く利用することが必要になるためだ」と話す。

 日本ではメインフレーム時代からシステム統合においてきちんとした方法論で、システムを構築しなければならないという風潮が残っており、スピード感では米国にはかなわない。その一方で、「最終的にできあがったシステムの品質としては日本の方が優れている可能性が高い。今後、日本のSOA事例が発表されたときには、その品質が米国に比べ優れていることが予測でき、日本の事例を世界に向けて発信できる日が来るだろう」と、飯島氏は話している。

SOAを実現するテクノロジーとサービス

 SOAの実装において重要なテクノロジーとなるのがESB(エンタープライズ・サービス・バス)と呼ばれる製品だ。バスとは、コンピュータ上でメモリや入出力装置、CPUなどを並列に接続し、その間でデータをやり取りするための回路のことであり、ESBはエンタープライズサービスをやり取りするためのソフトウェアハブとなる。

 飯島氏は、「ESB製品は、IBMやOracle、BEA Systemsなどが、ようやく2006年より製品群を本格的に市場投入することから、2006年、2007年が日本市場におけるSOAの実装元年となるだろう」と話している。

 SOAの実装においては、テクノロジー分野だけでなく、SOAという仕組みを活用してシステムを構築するシステムインテグレーター(SI)の存在も大きなポイントになってくる。「2005年より、大手メーカー系も含めたSI企業が、SOA実現のための方法論やテンプレートなどの整備を行ってきた。2006年はその方法論やテンプレートを使った実装をスタートする年になる」と飯島氏。

 ただし、ようやく最大手のSI企業の準備が整ったところというのが実情で、すべてのSI企業において本格的にSOA実装の汎用的なスキルセットが提供できる状況にあるかといえば時期尚早であり、もうしばらく様子を見る必要がある。飯島氏は、「現時点でSOAを実装しようと考えているユーザー企業は、SI企業を慎重に選定することが成功、失敗の大きな分かれ目になるだろう」と話している。

 ただし、「システムのすべてをSI企業に任せきりにすべきではない。アウトソーシングに頼りすぎると、システムの要ともいえるインフラ部分までSI企業にコントロールされてしまい、それがSOA実現の足かせになってしまう可能性もある」と飯島氏は注意することも促がしている。

 「言い換えれば、ユーザー企業にITの“目利き”がいない状況が増えているということが最大の問題。SOAに対する期待や理解は確実に進んでいるのだが、アウトソーシングへの依存度が高い企業ほど、SOAを実装する場合のリスクも高くなる。SOAはあくまでも“コンセプト”であり、そのコンセプトを実装するときに、スキルが伴っていないと効果的なSOAを実現できない」(飯島氏)

 業務の知識を持ち、かつ高いIT能力も兼ね備えるというバランス感覚が持てない企業は安易にSOAの導入を考えることは危険を伴う。「SOAの実装そのものについてはSI企業に任せてしまってもいいのだが、実装に至るまでのITスキルおよび業務ノウハウについてはきちんとコントロールできるユーザー企業内の“目利き”の育成が不可欠になる」と飯島氏は話している。

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