日本オラクルは3月1日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)において、「TURNAROUND JAPAN 〜事業再生とITの役割〜」をテーマとしたカンファレンス「Oracle OpenWorld Tokyo 2006(OOW 2006)」を開幕した。同カンファレンスは3月3日まで開催されている。
OOW 2006では“TURNAROUND”をテーマに、事業再生に成功した企業をはじめ、現在事業再生に取り組んでいる企業、ビジネスパートナー企業などが、どのようにOracle製品群を活用しているかが、250セッションのセミナー、158社の出展企業により紹介される。期間中、述べ1万5000人が来場する予定という。
夕刻に開催された初日のキーノートセッションには、Oracle Corporationのサーバ技術担当 シニアバイスプレジデントであるThomas Kurian氏およびAndrew Mendelsohn氏が登場。Kurian氏は「SOAを実現する次世代ミドルウェア Oracle Fusion Middlewareの総て」を、Mendelsohn氏は「Oracle Database 10g:The Gridの未来」をテーマにそれぞれ講演した。
SOA実現による“フュージョン効果”
まず、ステージに登場したKurian氏は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)ベースのエンタープライズソリューションの基盤である「Oracle Fusion Architecture」と、SOA対応アプリケーション構築のための技術基盤となる「Oracle Fusion Middleware」の優位性について紹介した。
- Oracleのサーバ技術担当 シニアバイスプレジデントであるThomas Kurian氏
同氏はまず、「Oracle Fusion Middlewareは、すでに全世界で2万8000社以上、世界のトップ50社の内の38社、トップ1000社の内の820社以上が採用した実績がある。たとえば、HP、キャップ・ジェミニ、アクセンチュア、EDS、デル、インフォシスなど、全世界で4780社以上のISV、9750社以上のVARが採用している」ことを強調した。
Oracle Fusion Middlewareの採用が拡大している理由をKurian氏は、「Oracle Fusion Middlewareには、SOAの実現に必要なテクノロジがすべてパッケージされているベストオブブリードの製品であるため」と話している。
具体的には、Oracle Application Server 10gを中核に、ESB(エンタープライズ・サービス・バス)によりバックエンドのサービスを統合し、BPM(ビジネスプロセス管理)により容易にビジネスプロセスを設定し、BAM(ビジネス・アクティビティ・モニタリング)によりビジネスの現状を把握、さらにBI(ビジネス・インテリジェンス)により意思決定を行うというエンド・ツー・エンドのソリューションをSOAベースで実現できるという。
デモでは、PeopleSoftによる受注処理とOracle E-Business Suiteによる受注管理システムにSSO(シングル・サイン・オン)でアクセスし、をBPLEツールで連携、BAMやBIによりプロセスを改善するという仕組みが紹介されていた。
Kurian氏は、「Oracle Fusion Middlewareにより、リアルタイムに情報を収集し、リアルタイムに意思決定が可能な、これまで以上に効果的なビジネスプロセスを実現することができる。これを“フュージョン効果”と呼んでいる」と話している。
Grid ComputingでTCOの半減に挑む!
Kurian氏に続き、ステージに登場したMendelsohn氏は、Oracle Database 10gを中核としたGrid Computingの未来について紹介した。
Mendelsohn氏はさらに、「Grid Computingは、高層マンションのようなもの。高層マンションの建築には、すべて標準化された建材と標準化に基づいたブループリントが必要。また、経験やノウハウを蓄積し、共有することで、以前建築したブループリントを再利用することもできる」」と話す。
「Grid Computingも業界標準の使用に基づき、コンポーネント化された複数台のコモディティサーバをスケールアウトしていくことで、高いパフォーマンスはもちろん、高い信頼性や可用性、セキュリティ、コストパフォーマンスを実現できる」(Mendelsohn氏)
同氏が話すとおり、企業システムにとって数多くの効果が期待できるGrid Computingだが、最近特に顧客の関心が高いのがセキュリティの分野という。「最小限の高sとで最高のデータ保護を実現するにはどうしたらいいのか、という切実な問い合わせが多くなっている」とMendelsohn氏。
この背景には、日本でも注目度が高くなり始めているSOX法をはじめとするコンプライアンスへの対応が企業において急務となっていることが挙げられる。Oracle Database 10gでは、搭載されたさまざまな機能により、セキュリティやコンプライアンスへの容易な対応を支援する。
「これまでは、他社製のセキュリティ製品を組み合わせることで、高いセキュリティを実現していた。しかしこの方法では、コストがかかるほか、製品同士の連携部分にセキュリティホールができる。Oracle製品では、セキュリティ対策に必要なすべての機能が完全に統合されているので、低コストで最高のデータ保護を実現できる」(Mendelsohn氏)
セキュリティ強化の取り組みとしてMendelsohn氏は、アプリケーションに変更を加えることなくデータの必要な部分だけを容易に暗号化できる「トランスペアレント・データ・エンクリプション」と呼ばれる機能をデモを交えて紹介した。
同氏はさらに、「Data Vault」および「Audit Vault」と呼ばれる現在開発中の技術に関しても紹介。Data Vaultは、たとえばシステムの開発者が本番稼動中のデータにアクセスすることをできなくする技術であり、一方のAudit Vaultは、監査用の情報を蓄積することでデータが改ざんされることを防ぐ技術だ。
Mendelsohn氏は、SOX法などコンプライアンス対応をはじめ、今後のセキュリティ対策においては、「権限のあるユーザー、正規のアプリケーションからアクセスされたときだけ情報を表示できる仕組みが重要になる」ことを強調した。