アプリケーションとデータの“離反”
BIシステムを構築するうえで大切なのが、データを統合することだ。だが、Friedman氏は、データ統合の重要性はBIだけにとどまらないと語る。データ統合は、メインフレームのコンバージョンやシステムマイグレーションでも効果を発揮する。さらに、データ統合は現在大きな注目を集めるサービス指向アーキテクチャ(SOA)を活用したシステム構築で必要となるのである。
SOAは単純にいえば、システムの機能をサービスとしてとらえ、サービスを柔軟に、俊敏に組み合わせるというものだ。このようなメリットがあるためにSOAは注目されているが、ここで忘れてはいけないのが、SOAで構築されたシステムでも取り扱うのは、企業内で生まれるデータという当たり前の事実だ。Friedman氏はこう語る。
「SOAで構築されたシステムでは、アプリケーションとデータが“離反”することになる。その時、データの主管は誰なのか、どこの部署なのか、どの機能なのか、またデータの可視性はどうなのか、データの制御はどうするのか、データのコンテキストはどうなるのか、などの問題が生じることになる」
SOAによってデータ統合の必要性は軽減せず、むしろ、SOAでデータ統合戦略を持たない企業は、より大きなリスクを抱えることになるとFriedman氏は解説する。
「きちんとデータ管理をしないと、SOAは成功しない。SOAでデータ統合問題に関する責任放棄が許されることはない。この問題への対処は、より高まることになる」(Friedman氏)
リアルタイムエンタープライズ
また「『データ分析』を超える」にあるように、BIと密接に関連するビジネスアクティビティモニタリング(Business Activity Monitoring:BAM)とBIが、そしてさらにBIとBAMとビジネスプロセス管理(Business Process Management:BPM)が連携するとき、データ統合はさらに重要な課題となってくる。
何らかのイベントが企業活動に発生したことをBAMが補足し、警告情報(アラート)をBIに与える。事前に定めておいたルールに基づいてBAMはBPMに対して、自動的にBPMの振る舞いを決定する。BAMからアラートを受けたBIを見たユーザーは、そこで意志決定を行い、BPMに対して指示を送るのである。
このようなシステムは、すべてリアルタイムで行われることを前提としており、ガートナーでは、事象が発生したときにすべてリアルタイムで対応するシステムを「リアルタイムエンタープライズ」と呼んでいる。
データ統合は必須
「BAMとBI、BPMを利用したプロセスが自動化されたシステムにおいては、データ統合もリアルタイムでなければならない。リアルタイムデータ統合はリアルタイムエンタープライズに向けた補完的で、なおかつ必須のテクノロジーと見なす必要がある」(Friedman氏)
Friedman氏によれば、リアルタイムデータ統合を最初に採用するのは、大規模なデータフローをリアルタイムで同期させる必要がある業種、またはリアルタイムで分析しなければならない業種になると説明する。その業種とはたとえば、金融や医療、旅行業、製造業になるとしている。
これからもビジネスのスピードが加速化することは容易に想像できるだろう。その時に向けて、システムが取り扱う対象であるデータの統合は、欠かすことのできない問題なのである。