資金が潤沢というだけの相手にはIDE事業は売らない--Borlandのエバンジェリスト - (page 2)

柴田克己(編集部)

2006-03-08 18:46

--IDE事業にフォーカスした新会社の設立を目指すとのことですが、Windows開発ではマイクロソフトのVisual Studioが、Java開発にはオープンソースのEclipseなどをはじめとするフリーのツールが存在しており、多くのユーザーを獲得しています。ツール事業に特化した場合のビジネスの将来性については、どのように考えていますか。

 ビジネスの世界で生き残っていくためには、顧客に対して常に付加価値を提供し、それによって顧客のビジネスを成功へと導くことが必要です。そのためには、われわれの製品が優れていることや、プログラミングの生産性を大幅に上がることを証明していかなければなりません。

 多くのデベロッパーが現在、その生産性の高さを認めてJBuilderを使ってくれています。JBuilderには、Javaのソース開発だけでなく、それ以外の豊富な機能があります。それはRAD機能や、データベースコネクティビティ、ウェブとの連係といったものです。一方で、Eclipseは基盤ライブラリとして非常に優れた資質を持っていますので、それを生かす形でJBuilderの機能性を付加する「Peloton」と呼ばれる製品も予定されています。

 Windows開発についてですが、現在、唯一DelphiだけがビジュアルなRAD環境で、Win32、.NETの両方の開発に対応しています。全く同じ言語でさまざまなプラットフォームに対応することができるのです。将来的には、Windows Vistaや64ビットの開発にも対応可能です。

 また、オープンソースモデルについてですが、このモデルでイノベーションを続けていく場合、コミュニティにおけるイノベーションのみならず、どこかの企業がリソースを提供し、投資して、それを進化させていく必要があります。われわれとしては、オープンソースの成果を、何らかの形でわれわれの環境に取り込んでいくという立場になるかもしれません。例えば、Delphiのユニットテストなどはそうですし、データベースに関してはMySQLもネイティブでサポートしてます。

 われわれは、常に顧客に対して自分たちの製品の優位性を実証をすることを心がけています。そうすることで製品を買ってもらい、その収益を再投資することで、機能拡充を行っていくというモデルを実践する企業になっていきたいと思います。

--今後ボーランドが注力していくALM分野についても聞かせてください。ツール事業の売却発表と同時に、Segue Softwareの買収もアナウンスされました。ソフトウェアの品質管理の分野でビジネスを行っている企業は多くありますが、Segueの買収で、ボーランドのどういった部分が補強されるのでしょうか。また、競合に対するボーランドの強みはどこになるのか教えてください。

 Segue Softwareの買収における最大のポイントは、ソフトウェア品質のライフサイクルマネジメントに関する主要な機能を強化することです。

 ボーランドでは、Software Delivery Optimization(SDO)というビジョンの中で、ALMを提供しており、「IT管理とガバナンス」「要件定義と管理」「ライフサイクル品質管理」「変更管理」いう4つの分野に注力しています。Segueは、ソフトウェア品質の最適化に注力している企業です。同社の製品群やテクノロジーをボーランドのものと組み合わせて、先ほどいった4つの主要分野において、人とプロセスとテクノロジーという観点から、最適なやり方を提供していきます。

 こうした事業は、ユーザー企業と共同で行うアセスメントやワークショップというプロセスが重要になります。エンタープライズユーザーに対し、そのユーザーのニーズにあったパーソナルなサービスを提供するのがボーランドのビジネスというわけです。シュリンクラップパッケージによるソフトウェアビジネスとは全くモデルが異なります。

 ALMというカテゴリの中で、例えばITガバナンスのソリューション、テスト、ソースコードのコントロールなどを提供している企業が他にもありますが、それらはすべてバラバラです。ボーランドの場合は、人とプロセスとテクノロジーのすべてをまとめて、主要な分野に対応していくという、非常にユニークなアプローチをとっています。また、プラットフォームに縛られないというメリットもあります。

--数年前、ボーランドはエンタープライズ分野への注力を表明して「インプライズ」という社名に変更した時期がありますね。その後、またボーランドに社名を戻していますが、そのときと今回とでは、状況はどのように変わっていますか。

 全然違いますね。なので、かいつまんで説明します。インプライズと名称を変えたころには、Delphi、C++ Builder、JBuilder、VisiBrokerという製品を持っていました。ただし、それだけでした。

 その後、数年で多くの買収と十分な投資を行って製品のラインアップをそろえ、機能を拡充しました。IT管理とガバナンスには「Tempo」、要求、要件定義には「CaliberRM」、ビジネスプロセスモデリングについては「Together」、変更管理については「StarTeam」があります。ボーランドの強みは、単に製品を納めるだけでなく、サービス面も含めたソリューションフレームワークを提供している点です。これは、実証された方法論に基づくもので、非常に品質の高い形でユーザー企業のプロセスを改善し、ソフトウェアのデリバリーに関して高いクオリティを保つことができます。また、チームとしての生産性を上げていくための方法論が確立されており、幅広いエンタープライズカスタマーに対応できます。

 ボーランドは、ビジョンとしてのSDOを掲げて今後も前進を続けていくでしょう。一方、われわれはソフトウェアの開発という点にフォーカスをして、IDE事業を継続していきます。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]