チェックポイント方式とは、一定の間隔で、全トランザクションの状態をディクス上に記録し、一つ前のチェックポイント時点以降にメモリー上で更新されたデータの内容をディスク上のDBに反映する処理である。システム再立ち上げ時には、ディスク上の最新のチェックポイントを起点として、ログ情報を使って、システム障害前に完了したデータ更新トランザクションは再実行し、仕掛かり中で中途半端なトランザクションについては、そのトランザクションを取り消す処理を行い、障害発生直前の整合性ある状態に回復させる。
さらに、DBの障害に備えてDBを二重化する機能やシステム障害に対して素早くシステムの切り替えが行える高速フェイルオーバー機能などの信頼性機能の強化や、大規模なDB運用時に特に必要となるDBの障害箇所を部分的に閉塞して、システムから切り離し、バックアップなどから回復して再接続する機能や高速バックアップ取得、DB再編成、DB再構成機能などの運用機能の強化など、メインフレーム時代のDBMSで実装された技術がオープンサーバのDBMSにも継承され発展してきている。
このように、最適化処理の高度化、データアクセスの高速化という面だけでなく、運用を含めたシステム信頼性の強化という面も含めた広範囲に及ぶ機能強化と同時に、幅広い分野や実システムでの実戦を経て、今やリレーショナルDBは、企業や公共機関などのミッションクリティカルな基幹業務システムの基幹DBとしての地位を占めるに至っている。
リレーショナルDBが対象とするデータも、当初の数値や文字列データという基本的なデータから、適用業務システムの拡大に伴って文書や地図データや画像データなどのマルチメディアデータへとその対象範囲を拡大し続けている。そのようなユーザーニーズや情報表現の多様化に呼応して、DB言語SQLの国際規格も、データタイプの多様化やオブジェクト指向機能の取り込みなどに見られるようにリレーショナルDBの応用分野拡大を指向して2003年にはSQL2003が制定され、その後も新たな仕様の開発作業が精力的に行われている。
また、インターネットの普及によりHTMLをベースにしたウェブ情報提供が広く行われるようになった。この情報は当初、固定的な情報であったが、メディアの多様化、情報表現の多様化によりリクエストに応じて提供情報を動的に構成することが多くなった。結果的にウェブの素情報はリレーショナルDB(DBサーバ)に保存し、アプリケーションサーバで動的にウェブ情報に処理する、いわゆる3階層モデルが普及し、インターネット時代においてますますリレーショナルDBMSの重要性は高まっている。
さらに、ユビキタス情報社会の到来に伴って、RFID(Radio Frequency-Identification)チップのようなユビキタスデバイスの急激な増加により、今までは捨てていたものや数値化できなかったものがデータ化できるようになってくる。また、非定型データを含めて企業が扱わなければならないデータ量も飛躍的に増大するとともに、データの種類や詳細度も増すと予想されている。そのような情報の爆発的な増大に対して、リレーショナルDBMSはさらに挑戦していくことになり、新たなる発展が期待されている。
このようなユビキタス情報社会の可能性を感じさせたのが、2005年3月25日から9月25日までの間に2200万以上の来場者を迎え好評の内に幕を閉じた「愛・地球博」でのICチップ入りの入場券の大規模管理システムであろう。超小型無線自動認識ICチップ「ミューチップ」を埋め込んだミューチップ入場券と連携した入場管理と観覧予約のシステムである。パビリオンやイベントの観覧予約など、ユニークなサービスを提供してユビキタス情報社会の到来を予感させたのである。
そのシステムのDB管理システムとして使用されたのが、日立製作所の基幹リレーショナルDBMSであるHiRDB(Highly scalable Relational DataBase)であった。
リレーショナルDBMSは、飛躍的にデータ量が増大するユビキタス情報社会のバックエンドを支える基幹DBMSをいうだけでなく、ユビキタス情報社会のフロントエンド、携帯電話などのモバイル機器、カーナビ、情報家電などの組み込み機器の種々のデータを安全に管理するDBMSとしてもその裾野を広げてきており、日立製作所もHiRDBの技術を生かした組み込みシステム向けリレーショナルDBMSとしてHiRDB Embedded Database Entierを提供している。