「今の経営」を示すSFAの導入に業務を熟知したIT部門が活躍 - (page 2)

石田巳津人(月刊ソリューションIT編集部)

2006-03-20 18:00

 実際、それまで目立っていた現業部門とIT部門の間のミゾはERP展開の過程でかなり狭まったという。「生産部門に入ったスタッフなどは最後、生産ラインを見てその機能が分かるようになり、現場からも重宝されていました。高い業務知識が要求されるBOM(部品表)機能の実装などもIT部門が主導して行っていました」。

 そして熊澤氏自身も以前は、ERP導入を指揮する立場でありながら 現在では営業本部長の職にある。ITとビジネスの両面に長けているわけだ。熊澤氏とIT部門の双方が相手の分野に通じているからこそ、新SFAシステムの導入はスムーズに進んだのだ。

 情報システムの導入プロジェクトが失敗する原因は、エンドユーザーとIT部門の意思疎通の食い違いに端を発していることも多い。エンドユーザー側は「最新のITなんだからこれぐらいやれて当然」と思い込み、IT側は「これぐらいの制約は我慢してくれるだろう」と思いがちだ。

 熊澤氏が主導した新SFAシステムプロジェクトでは、この食い違いがほとんどなかったようだ。

ロスト情報の効果的な収集で商談不成立を定量的に分析

 新SFAシステムは、熊澤氏の考えを全面的に取り入れて開発した。パッケージとして「eセールスマネージャー」を選んだのも、表示項目などを自由に変更できるからだ。

 特に工夫を凝らしたのは、商談が不成立になった理由となる「ロスト情報」の収集だ。通常のSFAでは、自由記述で理由を書き込むことが多いが、それでは定量データ化できない。

 そこで不成立の原因を「納期」「価格」など最小限の5つに分類。営業マンが画面上でチェックし、選択できるようにした。「原因の項目はいくらでも増やすことはできますが、それでは回答がバラけ、要約された定性データとはならず、経営陣に意味が伝わりにくいと考えました」(熊澤氏)。

 ロスト情報の収集により、商談が不成立となった原因の統計が取れる。実際、パイロットプロジェクトの結果からは、5つの分類の中で「開発リソースの不足」による損失額が少なくないことが判った。

 熊澤氏は「営業マンが『開発リソースが足りないから商談が取れない』と言っても、それは単なる不平不満で終わってしまいます。が、数字をともなった定量データとなれば、経営陣も聞く耳を持ってくれます」と指摘する。

SFAシステムにはプロセス分析機能も搭載

 もちろん、基本的なプロセス分析も可能になっている(画面参照)。営業マンの行動パターンを何種類かに分類し、何に時間を費やしているのか、簡単に集計・分析できるようになった。

画面 デンセイ・ラムダのSFAシステムの画面例

 その結果、朝早くから夜遅くまで頑張る新人営業マンの場合、意外に「納品」「納期管理」「会議・打ち合わせ」の比率が高く、中でも「納品」には全体の43%が費やされている日もあり、改善の必要があることが判明したこともあった。こうした定量データがあれば、納品作業の外部委託を検討する価値があることも簡単に判断できる。

 新SFAシステムは検索性も高い。「売上げ見込み=5000万円以上」の商談のうち、「未訪問期間=1カ月以上」といった複数条件で該当する商談を抽出。マネジャーが個々の商談のプロセスを見て、問題がないのかどうかチェックできる。

 そのほか、「保有商談数」「新規商談数」「成約商談数」という、3つの基準から営業活動を時系列にクロス分析することもできる。商談成約というポイントだけではなく、将来性も見定めることができるわけだ。

 熊澤氏は「もっとSFAにデータがたまってくれば、活用の幅が広がり、トップの経営判断にも役立つはずです。この仕組みはもっと活用していきたいと思っています」と抱負を語る。現場を知るIT部門とITを知る現場が交流するデンセイ・ラムダでは、さらに本格的なIT活用が活発化してきそうだ。

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