ESPに必要な機能要件は何か
では、ESPにとって必要な機能について考えてみよう。ESPの前提となるのは、まず、企業内に存在する「あらゆる情報」に対して、検索のための一元化されたインデックスを作成できることだ。
オフィス文書(Word、Excel、PowerPoint、PDF)やメール、グループウェア(Lotus Notes/Domino、Exchange)、イントラネット(HTML)といった、構造化されていないデータに加えて、RDBなどに含まれる構造化データに対しても、何らかの形でデータをクローリングし、インデックスを作成する必要が出てくる。また、独自開発の業務システムなどには、そのデータに対してインデックス付けを可能にするための何らかのゲートウェイを用意してやる必要もある。従来のような、システムに作りつける検索とは異なった要件が求められる。
みずほ情報総研、システムコンサルティング部マネジャーの吉川日出行氏は、ESPの構築を行うための検索システムに必要な要件として、「インデックスの構成などのコアの技術部分は各社が独自に差別化を図る部分になるだろうが、それ以外の、エンジンと各種システムとのインターフェースやAPIといった部分は可能な限りオープンになっていることが望ましい」とする。インデックスの作成に当たって作られる中間データの形式がオープンであれば、独自システムとのゲートウェイも作成しやすく、またAPIが公開されていれば、各種アプリケーションに対して統一された検索機能を埋め込むことも容易になるためだ。
吉川氏はまた、さらに重要な機能として「認証システムやユーザーディレクトリとの連携」を挙げる。
企業内のシステムには、情報の参照にあたって、必要となる「権限」が存在する場合がある。例えば、文書管理システム上でマネージャー以上の役職を持つ人のみが閲覧可能な文書があるとして、この文書に対して作成されたインデックスは、権限を持たない人に対しては提示されないようにする必要がある。たとえ内容が参照できないとしても、場合によっては「その文書が存在する」こと自体が分かってはいけないということもあり得るわけだ。吉川氏は、「日本版SOX法などの影響で、日本の企業全体がシステムを利用した内部統制を考えていかなければならない状況にある。その際に必要となるモニタリングの機能についても、ESPによる検索機能と組み合わせて考えていく形になるはずだ」とする。
ESPの構築を進める際に考えるべきこと
では、これからESPの構築を目指す場合、どのようにその作業を進めていくべきだろうか。吉川氏は、まずは企業内のシステムを見回して、有効な検索機能がないシステムから、順次ESPに組み込んでいくことを勧めている。
「現在、十分に機能している仕組みを、早急にESPに取り込む必要はない。ただ、実際には蓄積されている情報に対して有効な検索手段が用意されていないシステムはかなりの数で存在する。そうしたシステムのための検索手段としてESP上の仕組みを利用するところから始めるのが有効だろう」(吉川氏)
また、ESPの構築にあたっては、システム的な観点に加えて、さらに「情報」の観点からも、社内の状況を見直すことが重要になってくる。つまり、社内に存在する情報のそれぞれについて、どれが、だれにとって、どれくらい重要な情報かということを一定のルールに従って判断するための仕組みだ。こうした重要度の判定ロジックは、インデックス更新の頻度や、ユーザーに対する結果提示の仕方などに影響を与えることになる。
業務にあたって必要な情報というのは、社内での役割の違いや、業種によっても異なってくる。もちろん、その会社が持つ独自のノウハウといったものもあるだろう。こうした情報に対する「意味づけ」は、従来、ナレッジマネジメントの観点に基づいたグループウェアの運用や、企業情報ポータル(EIP)の構築といった枠組みの中で議論されてきたことでもある。そのため、そうしたシステムの構築にあたって、社内に存在する情報の棚卸しを経験したことがあれば、その適用範囲を広げていく作業を行うことになる。
「情報共有にあたっては、その企業の“コアナレッジ”を共有しなければ意味がない。役に立たないゴミ情報までをすべて検索できるようにしたところで、情報を探し出すための効率は上がらないだろう。ゴミの中から宝となり得る情報をある程度選別して、意味のあるデータが集められたインデックスを作成するなどの工夫も必要になる」(吉川氏)
こうした、情報の棚卸し作業に加えて、日々、新たに蓄積されていく情報の中から、重要な情報をシステムが自動的に判別するための仕掛けも必要になる。例えばグーグルの「PageRank」は、そのウェブページのインターネット上での「重要度」を表す指標として画期的なものだった。しかし、企業にとっての情報の重要度は、単純に「多くのリソースからリンクされている」という基準だけで判断できるものではない。
この、企業内情報における個別の情報の重要度を判別するために必要な「新たな評価軸」については、現在ESPを標ぼうする各社がさまざまな研究を行っている段階だ。そこでは「文書の参照回数」「情報作成者のステータス」などの評価に加えて、社内SNSや社内ブログの情報との連携、情報参照者による情報へのタグ付けといったWeb 2.0的な手法も試みられている。
次回以降は、ESPの提供を標ぼうする各ベンダーの取り組みを紹介していく。