BPM(ビジネスプロセス管理)ベンダーであるIDS Scheerは5月18日から2日間、オランダの首都アムステルダムで年次カンファレンス「ProcessWorld Europe 2006」を開催した。13回目となる今年は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)や内部統制などのトピックスとともに、BPMに大きな関心が寄せられていることから、約1400人が参加。過去最大の規模となった。
企業に柔軟性とアジリティをもたらすBPM
カンファレンス初日の基調講演を行った創業者兼会長であるAugust-Wilhelm Scheer氏は、サックスを持ってステージに登場し、得意のジャズ演奏を披露した。もちろん、このパフォーマンスには、重要なメッセージが込められている。
「ジャズバンドと現代の企業には関連がある」とScheer氏。一見ルールがないように見えるジャズだが、いくつかのハーモニーやリズム、パターン(=ルール)を熟知してはじめて即興が生まれる。決して練習なしには演奏できないのだ。
サックス、ピアノ、ベース、ドラムの各楽器の演奏者は、1枚の楽譜(ルール)をベースに、即興を盛り込む。現代の企業も、「ルールと個人の創造性の間でバランスをとることが必要」とScheer氏は言う。
同氏は約25年前に、IDS Scheerの原点ともいえる自動車業界向けのビジネスの運行プロセスを開発している。物流と製品開発の2つの柱を持つもので、その後これを核に、マネジメントプロセスとガバナンスプロセスが取り囲むフレームワークを開発した。
「業界を問わずあらゆる企業が利用できるフレームワークだ」(Scheer氏)
近年、決して新しい考え方ではないBPMにスポットが当たっているのは、SOAの影響がある。変化に迅速に対応でき、柔軟性のあるITシステムでは、プロセス主導の考え方が求められることから、BPMはSOA実現の鍵を握るといっても過言ではない。
Scheer氏はまた“人”の重要性も強調し、新しい考え方を受け入れやすくするために、インタラクティブなeラーニング形式のトレーニングCD-ROMなども提供することを明らかにした。
ビジネスのBPMはSOX法遵守にも有効
製品について詳細なレビューを行ったのは同社取締役のWolfram Jost氏だ。同氏は、「われわれのBPMは、BPMライフサイクル全体を支えるBPMのプロセスそのものだ」と自社BPMと他社との違いを強調した。
「BPMは技術ではない」という同氏は、BPM実現のステップとして、次の段階を紹介した。
- Who:ビジネスプロセスの責任者は誰か?
- How:どのようなプロセスモデルか?
- What:ビジネスプロセスの中身は?
- Whereby:どの技術を利用する?
- Why:ターゲットシステムはどれか?
同氏は、「技術は4段階目に出てくるものであり、そこまではビジネス側の課題となる」ことを主張した。
“ビジネスのBPMツール”を標榜する同社は、ビジネスプロセスのライフサイクルを、「戦略→設計→実装→管理」と定義しており、「ARIS Platform」ブランドのもと、各ライフサイクルに応じて「Strategy Platform」「Design Platform」「Implementation Platform」「Contorolling Platform」の4つのプラットフォームをベースに製品を提供している。
最大の特長は、データモデル「ARIS Data Model」とユーザーインターフェース。ARIS Data Modelは、メタモデルで定義するセマンティックなデータモデルで、ビジネスプロセスの分析/評価が行える。
「このレベルを実現できるのは我々だけだ」とJost氏は胸を張る。ユーザーインターフェースは数年前から重要な課題として取り組んでおり、特に最新版であるバージョン7では、プロセスを大幅に簡素化し、その効果を反映したという。