IT専門調査会社IDC Japanは5月30日、従業員100人以上の企業のITマネージャーを対象とする、音声とデータの統合に関する調査の結果を発表した。同調査は、2004年から同社が毎年継続して実施しているもので、回答数は419件だった。
2005年における国内VoIPサービス市場全体の売上は前年比94.8%増の2753億円、個人向けの市場規模は1196億円、法人向けが1557億円と成長している。しかし個人向けVoIP市場が従来の「050」VoIPサービスに加えて新たに「0AB〜J」タイプの順調な立ち上がりを見せたのに対し、法人市場には伸び悩みが見られた。
調査結果によると、VoIPサービスの中でも導入率が高いサービスの1つである050IP電話サービスは、2004年の調査で60.3%のユーザーが「導入を検討している」と回答していたが、2005年に「導入済み」と回答したのは12.3%、2006年は13.6%にとどまり、法人市場のVoIP導入率の伸びが鈍化していることが明らかになった。一方、「導入の予定はない」と回答したユーザーは、2005年に46.1%、2006年は47.7%と、2004年の25.6%から増加している。
VoIPを導入する予定がないと回答したユーザーのみを対象とした質問では、VoIP導入の阻害要因となっているのは、2005年、2006年ともに1位が「構築コストが高すぎる」で、次いで「導入するメリットがわからない」「音声の質や信頼性に問題がある」と続いている。
IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの門脇博之氏は「既存のシステムであるPBXに代わるものとしてVoIPを導入する際の、構築コストや導入メリットに不安を持っているユーザーに、VoIPのメリットを訴求していくことがより重要になる」と見る。
また同氏は、サービス提供事業者はさらにサービスメニューを揃え、それをどのように販売していくべきかを模索しているが、「法人向けには050が持つモビリティ特性とアプリケーションを統合した付加価値サービスの開発および販売を強化するために、ベンダーアライアンスやターゲティングが戦略上の鍵になる。VoIP法人サービス市場は、さらなるユーザーニーズを模索する段階にあるが、FTTHの導入率が高いことは、VoIP市場全体の成長要因だ」と分析している。