Mac OSからMac OS X、そしてIntelへ
Macが搭載するOSは「Mac OS」と呼ばれる。Mac OSは毎年発表される新ハードと歩調を合わせつつ、劇的な進化の道をたどった。
1990年まではGUIの基本機能の充実に力を入れていた。今日、Windows用として発売されているものも含め、GUIアプリケーションのほとんどは、この時代にMac上で誕生した。例えばMicrosoftのOffice、Adobe SystemsのIllustratorなどがそうだ。
1991年に登場したSystem 7.xは、透明度情報を加えた32ビットカラー表現に加え、疑似マルチタスクや仮想メモリといった今日的な機能を備えていた(マルチディア基盤技術のQuickTimeも同時期に誕生)。
AdobeのPhotoshopやPremiereといった画像処理、動画処理ソフトはこの時代にMac用ソフトとして誕生した。この頃、Macはそれまででも最高の10%ほどの市場シェアを占めた。しかし、そこから先は下り坂となった。
Windows 3.xの登場後は、Mac OS対Windowsの競争が激化する。AppleはOS技術での先行を広げようと頻繁に機能追加をしたが、そのせいでOSの安定性が落ちた。また幅広いユーザー層に対応しようと製品を増やしたが、これが大量の在庫を生むことになった。
Appleはプリエンプティブマルチタスク(OSがCPUを管理して複数の処理を同時に行う方法)とメモリ保護機能に対応した新世代Mac OS「Copland」の開発に社運を賭けたが、この計画が頓挫し窮地に追い込まれる。
結局、Appleは他社からOSの基盤技術を買うことになった。この時、選んだのがApple創業者で初代Macの生みの親でもある、Steve JobsがApple退社後に作ったNeXTだった。AppleはNeXTを買収し、JobsはAppleに復帰した。
今日のMacのOS「Mac OS X」は、NeXTのOS基盤技術である「OPENSTEP」技術を基盤に、動画再生ソフト「QuickTime」など旧Mac OSの機能や操作方法を加え、その上にAquaと呼ばれる新規開発のモダンな操作画面を加えたOSだ。OPENSTEPはUNIXベースのOSなので、Mac OS Xも普段、ユーザーの目に触れない下層レイヤーはUNIXで動いている。
Mac OS Xは、2001年3月に最初のバージョンがリリースされ、その後、ほぼ1年から1年半に1度のペースでメジャーアップデートが行われている。
2006年は機能的アップデートがなかったが、代わりにIntel版Mac OS Xが登場した。OPENSTEPは、元々Intel製CPUを含むいくつかのCPUで動くマルチプラットフォーム対応OSで、AppleはPowerPC用Mac OS Xのリリース後も、秘密裏にIntel版Mac OS Xの開発を続けていた。
PowerPCというのは、Apple、IBM、Motorolaの3社で開発したCPUで、Appleは1994年から採用していた。今日では多くのゲーム機にも採用されている。しかし、2004年頃になるとパソコン用PowerPCの開発が行き詰まり始めた。Appleは2005年夏にPowerPCを捨て、Intel CPUへの移行計画を発表、その半年後にはIntel版iMacとそれに対応したIntel版Mac OS Xをリリースした。
Intel CPU搭載Macの真価を発揮させるには、Intel CPU用に最適化したアプリケーションが必要だ。しかし、市場にはPowerPC搭載Macもまだ多い。そこでAppleは開発者にIntel用プログラムとPowerPC用プログラムを1つのファイルにまとめたUniversal Binary形式の採用を勧めている。
なお、Intel CPU搭載MacはRosettaというリアルタイム翻訳技術を搭載しているため、PowerPC用プログラムも実行できる(ただし、旧Mac OSのソフトを実行するClassic機能はないため、利用できるのはMac OS X用ソフトのみだ)。