Benioff氏は、マルチテナント方式に加えソフトウェアの未来像として必要となる、9つの項目を示した。
- 従来型以上に求められる高性能、高信頼性、顧客から信頼を得るための透過性
- どのようなビジネスサイズにも対応できるスケーラビリティ
- メタデータ利用によるコストや手間を大幅に抑えたカスタマイゼーション機能
- マッシュアップによるサービスの統合アプリケーション
- Webサービスベースの透過的な統合アプリケーション
- セールスフォースではサンドボックスと呼んでいる、開発環境のサービスとしての提供
- 顧客や開発者が自由にアプリケーションを公開、選択できるディレクトリ機能
- インターネットをOSとして複数アプリケーションの実行を可能にする、マルチアプリケーション機能
- ブラウザだけでなく、モバイルやPDAなどのあらゆるデバイスのサポート
Salesforceは、これら未来のソフトウェア要件すべてを、すでに満たしているという。
この説明の後Benioff氏は、Googleの提供するメールサービス「GMail」や表計算サービス「Google Spreadsheets」、ワードプロセッササービス「Writely」など、インターネットで利用できるアプリケーションをデモを用いて紹介した。これらのアプリケーションは、1つのサーバーで稼動しており、バージョンの違いや互換性を気にする必要は全くない。さらに、複数のユーザー間でデータ共有が可能で、共同作業が簡単に実現できる。デスクトップソフトウェアとは、この点が大きく異なるのだ。
「モノポリーゲームでMicrosoft Wordに独占されているため、勝ち目はないと言われるかもしれないが、ゲームのルールはいま変わってきている。先ほど述べた10項目こそが、新しいルールなのだ」(Benioff氏)
さらにBenioff氏はデモを続け、Salesforce.comの画面に切り替えた。マッシュアップでGoogle Mapとの連繋を示し、単に同じ画面に2つのアプリケーションが表示されるのではなく、完全に統合されている点を強調。同社の提供するウェブプラットフォーム「AppExchange」上で先ほどのワープロソフトWritelyをも統合して見せ、ビジネスアプリケーションの中に取り込んで共同作業が容易にできることを示した。
Benioff氏は、「AppExchangeにより、このようなアプリケーションをユーザー自ら作ることができ、それを簡単に統合できる。このAppExchangeが、現在唯一のオンデマンドプラットフォームであり、マルチテナント方式のソフトウェアであれば、年という長いスパンではなく、週という短いスパンで価値を見い出すことができる」と述べ、同社の提供するプラットフォームをアピールした。
ソフトウェアの未来像を備えたSalesforce.comの優位性を主張するBenioff氏。拡大を続け、世界ですでに44万4000の登録ユーザー数を誇る。どのくらいの速度でソフトウェアの未来像へのシフトが起こるのかはまだ予測しにくいが、未来の方向性は確実にこの方角を指し示しているようだ。この方向を見誤らず、そして乗り遅れることなく進んでいかなければ、未来のソフトウェア関連企業として生き残るのは難しいのかもしれない。