機能よりもユーザーの使いやすさを優先--ポーライト:グループウェア最新導入事例(2)

みずほ情報総研

2006-07-20 21:52

ポーライト/サイボウズ ガルーン

 ポーライトは粉末冶金製品のトップメーカー。その主力製品「オイルレスベアリング」は小型モータの駆動に不可欠な要素部品として、自動車電装部品、OA機器、情報AV機器などあらゆる製品に採用され、マイクロ&小型モータ用オイルレスベアリングで世界トップシェアを獲得。一方、マシンパーツ製品でも高精度歯車をはじめ、各種用途の機械構造部品も幅広く提供している。

 現在、国内以外においても中国、台湾、米国など6カ国の海外生産拠点、フランスなど3カ国の海外販売拠点を有しグローバルネットワークを構築している同社が、2005年1月に組織間における情報共有の推進と情報活用のためにグループウェアを導入。導入にあたり「サイボウズ ガルーン」を選択して、全社ポータルを構築した。

 同社では、ガルーンの導入前からグループウェアを導入はしていた。しかしながら従来使っていたグループウェアは、導入時の目的が明確でないこともあってか、利用ユーザーも少なくほとんど活用されてない状態であった。このため、部門間での情報共有が滞り個別最適ばかりを追い求めるといった縦割り組織の弊害や社長などのトップの意識が現場まで迅速に伝播しないといった課題が経営課題に取り上げられるようになっていた。こういった経緯を経て、社内の縦の情報伝達の支援、横の情報共有の実現を目指して新たにグループウェアを一新することになった。

各自に必要な情報だけを表示

 ポーライトでは、スケジュール管理・ドキュメント共有・掲示板といったガルーンのほぼ全機能を利用している。このうち掲示板機能は「電子会議室」「電子掲示板」「通達」とさらに3つに分けて活用している。利用開始から1年が経過した段階で、ガルーンには30Gバイトのデータが蓄積されているという。

 ガルーンによって構築された社内情報ポータルのトップページは、「営業」「技術」「製造」といった役割単位にタブで区切られており、例えば営業担当者には受注や生産状況の情報のみが、製造担当者には生産に関する情報のみが表示される。このタブで区切られた各ページ上のコンテンツへのアクセス権も役割単位に設定されており、自分の役割に関係のないタブは表示されない。つまり、社員各自には必要な情報だけが表示されるように工夫してある。

製造情報ポータル 製造情報ポータルでは、製品情報のほかに入庫数や仕掛数などの生産情報を集約している

データの正確さが向上

 ポーライトの企業情報ポータルでは、ガルーンから基幹システムへの連携も実現しており、オラクルやSQL Server上の基幹データをガルーン上で照会や検索ができるようにしてある。例えばガルーンにログインした最初のページには、過去12カ月間での売上情報を基幹システムから読み込んできてグラフで表示している。その他生産管理システムのレポート作成機能を使って、ポータルから製品情報などの条件を入力すると、それに合致した検索結果がポータル上にリアルタイムに表示されるようになっている。

 このレポート機能を使って売上伝票や受注伝票の指図書のプルーフリストをガルーン上に表示させるようになったことで、担当者は伝票の確認作業を簡単に行えるようになった。ガルーンの導入前には、受け取った伝票を基幹システムに入力するとその後のチェックが簡単に行えなかった。この結果として、入力ミスなどがあった場合データに不整合が発生してしまい、基幹システムのデータが不正確なものになってしまうことがあったのだが、この機能の提供によりデータの正確性が格段に向上したという。

営業管理ポータル 営業管理ポータルでは、在庫、入庫、工程情報などを把握することができ、営業支援ツールとしても利用されているという

 ただし、ガルーン上で行えるのはデータの照会と検索だけとして、データの入力作業は従来通り基幹システム上で行うものとしている。この理由として同社の総務部総務課情報システム係の?島氏はこう言う。

 「基幹システムに入力するデータは、会社の根幹に係わる基礎データですから、誤りがあってはいけません。こういったデータについては、信頼性を確保するために入力画面に多重のチェック機能を実装することがポイントだと思っています。ガルーン上に簡易な入力画面を作ることはできますが、これはデータの信頼性確保の面ではあまり得策ではなく、精緻なチェック機能まで作ると大変です。ですから入力は基幹システム、照会はガルーンというように役割分担を明確にしました」

デヂエも利用

 さらに同社の場合、基幹システムとガルーンとのすき間にあたる、従来ExcelやAccessといったツールを使って手作業で行っていた業務についても「サイボウズ デヂエ」を使ってシステム化を行った。デヂエには、従来のAccessよりも手軽で幅広いデータベースが構築できる利点があり、ユーザー自らデータベースを構築して情報共有ができるようになっている。

 具体的には、指図書をデヂエに入力して製造現場がいつでも照会して確認ができるデータベースを提供。実際にこの指図書の一覧をデヂエのカレンダーのビューで表示させたところ、製造現場で仕事のやり方に変化が起こったという。カレンダー上の指図書の数を見て、例えば「明日以降どれくらいの指図書が来るか」がわかるようになったので、余裕がある時に前倒しで作業を行ったり、忙しい日には事前に準備を行うといったこと工夫が始まったのである。

 こういったデヂエのデータベースは、各部門のPC管理担当者が自由に設計できるものとしてEnd User Computingを推進している。ガルーンだけでなくデヂエも、利用に当たって、特に専門的な講習会を数多く必要とするソフトではない。PCに詳しい担当者であれば、簡単にアプリケーションを開発することができる。このあたりがサイボウズ製品の優れたところである。

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