十勝沖地震から阪神淡路大震災まで--電話インフラ保護の経験を生かすNTTファシリティーズ - (page 2)

藤本京子(編集部)

2006-08-25 23:21

 耐震補強では、既存のビルに対して鉄骨や耐震コンクリート壁を増設し、建物の強度を高めるほか、炭素繊維巻き柱で補強し、ビルの崩壊を防ぐ。一方、新築の際に採用する免震構造技術とは、特に情報通信用の建物など、大規模な通信アンテナ用の鉄塔によって地震の揺れが大きく伝わるようなビルに対し、実際の揺れをシミュレーションすることで免震構造を適用させるというものだ。また、重要施設では、地震波を吸収する制震装置(ダンパー)で地震エネルギーを吸収、地震の揺れから建物に加わる力そのものを減少させるといった対策も可能だ。ダンパーは、2005年に竣工したNTT東日本さいたま新都心ビルでも採用されている。

 さらにNTTファシリティーズでは、サーバなどのIT機器や空調装置の耐震性を調べる高性能振動試験システムを提供している。これは、実際の地震の揺れを再現できる装置の上にサーバなどの機器を乗せ、地震が起こった際に機器が崩壊しないか、問題なく機能し続けるかなどを調べるシステムだ。全国のNTT局舎には地震計があり、すべての揺れが記録されている。その揺れをそのまま再現し、機器の強度を調べているという。数日間かけて機器をテストし、評価レポートも含めて提供するソリューションだ。

 地震対策について村尾氏は、「建物の建てられた時期によって耐震性能に差があることを認識し、建物や設備の評価および補強を行ってほしい。営業損失も含めたリスク評価を行うべきだ」と述べた。

雷による被害が増加傾向に

 夏といえば雷の季節だが、村尾氏は「雷の被害は増加傾向にある」と指摘する。その理由として村尾氏は、電子装置の数が増加していること、その装置がそれぞれネットワークで接続されており、雷サージの進入経路が増加していること、さらには、自前のIT装置や配線が増え、対策が不十分であることなどを挙げている。

 また村尾氏は、「最近では誘導雷といって、遠くに落ちた雷がネットワークに乗って広範囲に影響を与えるケースも増えている」と話す。こうしたことから、2003年にJISが改正され、従来は建築物の雷保護において避雷針などの仕様が決められていただけだったのが、新JISでは性能までを規定するようになった。

 「雷害は、サージプロテクタを設置するなど、事前に施せる対策はある。リスクマネージメントへの意識を高めてほしい」(村尾氏)

 また、電源に影響を与える災害としては停電も忘れてはならない災害だが、NTTファシリティーズでは停電に備え、移動電源車を全国に配備している。この電源車は、新潟中越地震の際にも活躍し、「全国26カ所から電源車が集まった」と村尾氏。NTTファシリティーズは阪神淡路大震災でも電源車を用意したが、車が通れない場所も多かったため、迂回ルートの準備や自衛隊のヘリコプターで電源を運ぶなどして中越地震の際の電源補給に貢献した。ここでも同社は過去の災害の経験を生かしたというわけだ。

 村尾氏は、地震や雷だけでなく、日本が水害を受けやすい国であることも指摘している。同氏は国土交通省の資料から、河川水位より低い平地が国土面積の約10%であるにも関わらず、その10%に人口や資産が集中していることを指摘し、「国土10%の中に、人口の約半数、資産の約75%が集まっている」と警告する。

 こうした水害に対し、NTTファシリティーズでは、建物への水防板や防御装置、建物および敷地のかさ上げなどを提案している。もちろん、電力装置などを上階へ移転させることも水害を防ぐ有効な手段だ。

 このようにNTTファシリティーズは、数々の災害に対するソリューションを提供しているが、「まずは経営の観点から防災戦略を考えるべきだろう。体系的な防災対策を考え、対策の有効性を常に確認することも重要だ」と村尾氏。同氏は、「災害は忘れた頃にやってくる。備えあれば憂いなし」と、決まり文句ではあるが忘れてはならない言葉を再度強調した。

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