#5:現状改善の方法を探しても、現状を自分が本当に望んでいるものへと変えることはできない
別の有効な方法として、前の手順で完成させた長所のリストを拡充するというものがある。既にリストに挙げた項目を基に、現職で要求したいと思う項目を付け加えてほしい。それが終わったら、リストを見直して現在の会社で実現できる可能性のある項目を選び出してほしい。もっと責任を持たせてもらいたい、あるいはもっと柔軟な就業時間を設定してほしいという希望は、実現できる可能性がある。その一方、ミサイル製造企業で働いているのに、その会社に就職した後で平和主義という信念を持つようになったら、唯一の妥当な選択肢は違う会社に職を求めることだ。別の言い方をすれば、新たな職に就けばすべての問題が一気に解決すると仮定して転職する前に、現状の改善に努めるべきだ。そういった努力が功を奏しなかった場合には、新たな職を探すことが正しい選択だという自信を強めることができる。
#6:スキルが陳腐化してきているのに、現在の職場ではそれをアップデートする機会が与えられない
あなたのスキルセットの状態は今どうなっているだろう。スキルを常に最新のものに保てているだろうか。あなたの勤めている会社が今日倒産して求職活動を余儀なくされたら、どうなりそうだろうか。時代遅れのスキルしかなくて、よりよい条件どころか同等の条件でさえ仕事を見つけるのに苦労しそうだろうか。そうだという場合、現職において状況を改善するためにできることはあるだろうか?利用していなかった訓練機会はあるだろうか?
現職において雇用に適した人材でいつづけることができない場合には、自分が今の仕事を楽しんでいて会社が安定しているように見えたとしても、転職するべきであることは間違いない。会社に代わって自費で訓練を受けることも可能かもしれないが、新たなスキルを使う機会が職場になければ、そういった訓練の価値はほとんどない。あなたの今のスキルセットが現時点でどれほどの市場性を持っているかを判定するには、現在の仕事と同等の仕事を探してみることだ。あなたは、最低条件を満たすことができるだろうか?
#7:やる気を維持するための積極的な支援を十分に受けることができない
あなたは認められていると感じているだろうか。仕事において自分の価値を評価されていると感じることは、ほぼ定義不能なメリットで、言い方をかえればいかなる客観的な方法によっても測定できない報酬の形態の1つである。仕事において幸福感を得るために、認められていると感じる必要がどのくらいあるのかは、人によって大きく異なる。自らが達成したことに対して、一言も誉められたり公的に認められたりしなくても十分満足な人もいる。その一方で、こうした認知を受けることが給与レベルよりも重要であるという人もいる。
この点において適切な職に就く第一ステップは、自らのニーズを知ることだ。次のステップは、新たな職を考慮する際に、こういったニーズが満たされるかどうかを判定できるような何らかのテクニックを開発することとなる。これはおそらく、面接の際に適切な質問を行う、あるいは対象の会社に勤めていて内情を教えてくれるような人を見つけるといったことになる。現職での不満がこの点だけなら、認めてもらっていると感じるために必要なことを見つけ出すとともに、適切な人にそういったことを伝える方法を探してほしい。
上司があなたに話をするのは、もっとうまくやれるだろうとかもっと態度を良くする必要があるとか言うときだけなら、何かを適切にこなしているときにも同じように表現してもらえれば参考になると説明してみてほしい。同僚やユーザー、上司に対して、彼らのために役に立つには他に何ができるかを積極的に尋ねてみるとよい。これによって、彼らは現在のあなたのサービスレベルで十分に満足している等のポジティブなフィードバックを与えてくれるという、うれしい副作用がもたらされる場合もある。それでもまだあなたの望む評価を与えてもらえない場合には、転職するべきかもしれない。
#8:給与が十分でない
あなたは、自分の価値に見合うだけの報酬を得ているだろうか。自らの取り組みに対する金銭的な報酬が十分でないことが転職理由における唯一の理由となることはめったになく、最も重要な理由となることさえあまりないというものの、重要な要因であることに変わりはない。大半の人々にとって、自らの価値に見合うだけの(仕事に対して、市場相場並みあるいはそれ以上の)給与を得るということは、認めてもらっているということの重要な一側面である。自分の価値が分からない人はどうすればよいのか。そんな人は、求職ウェブサイトで同等の仕事を探して給与調査結果を調べるなり、最新の履歴書をヘッドハンターに送ってフィードバックをもらうなりしてみてほしい。
給与が十分でなければ、あなたに比べて経験が浅く、そして/あるいは能力が劣っている同僚があなたよりも高い給与を得ていると偶然知ったときに特にしゃくに障る。わたしは、働き始めて間もないころに新人教育を任せられたことがある。その仕事を喜んで引き受けたわたしだったが、ある日その新入社員は経験不足であるにもかかわらず自分のほぼ2倍の給与を得ていると知ったのだった。わたしはその日以降も新人教育を続けたものの、熱意は急速に冷めてしまった。そして、給与の5%引き上げを求めたものの却下されたため、わたしは唯一の妥当な行動として転職を選択した。この場合、給与は唯一の転職要因ではなかったものの、わたしに転職を決意させる最後の一押しとなったのだった。