シンクライアントとは何か?--その定義と進化

白川直哉(ITパティシエ)

2006-09-11 20:40

シンクライアントはソフトウェア構成の問題である(旧定義)

 「シンクライアント」という概念は、けっして新しいものではない。1996年にオラクルが発表したネットワークコンピュータ(nc)やUNIX環境で利用されるXターミナルも「シンクライアント」であったことを思い出してほしい。

 その当時、大手調査会社の定義では「シンクライアントは、ソフトウェア構成の問題であって、ハードウェアにフォーカスしたものではない」とされていた。

 すなわち、ユーザーが利用するクライアント端末には、「シン」つまり最小限のシステムソフトウェアを搭載し、ネットワークで結ばれたサーバサイドでアプリケーションを稼働させ、特別なプロトコルでそのアプリケーションが生成する画面(データの入出力)を射影するという、その仕組みそのものを「シンクライアント」と定義していた。

 従って、我々が日常利用しているクライアント/サーバ形式とは、処理の分散の仕組みとアプリケーションの所在が異なっているともいえる。同時にこの定義では、ハードウェアとしてのクライアント端末は、従来のPCでも「シンクライアント端末」でもどちらでもよいことになる。

 後半で解説するが、ネットワーク環境の発達と「シンクライアント端末」の成熟によって、また情報漏洩の問題が社会問題化される時代になって、はじめてハードウェアとしての「シンクライアント端末」が実用段階をむかえ注目されるようになったといえる。

ハードウェアとしての「シンクライアント端末」の特長

 ハードウェアの観点からPCと「シンクライアント端末」との違いを考えてみると、まず記録媒体としてのHDD(ハードディスク)が「シンクライアント端末」には搭載されていないということが挙げられる。このとき「シンクライアント端末」は、基本的に画面転送型とネットブート型とに分けられる。

 画面転送型として使われる「シンクライアント端末」は、書き込み禁止にできるCF(コンパクトフラッシュ)またはDOM(ディスクオンメモリ)に、Windows CEや組み込みLinux、Windows XP EmbeddedなどのOSを搭載している。この場合、サーバ上に仮想的に構成されたWindowsデスクトップイメージを、サーバ上のアプリケーションや管理ツールなどを実行するための機能であるターミナルサービスを通じて利用する。

 Windowsデスクトップイメージは、あたかもクライアント端末上で動いているかのように表示され、クライアント端末上のWindowsデスクトップを操作するような感覚で、サーバ上のアプリケーションを操作することできる仕組みだ。

 このクライアント端末上からWindowsデスクトップイメージを操作する機能は、「リモートデスクトップ接続(RDP:リモート・デスクトップ・プロトコル)」と呼ばれており、「シンクライアント端末」のCFやDOMに組み込まれている。

 一方、ネットブート型としての「シンクライアント端末」は、OSをはじめ、その他一切のシステムを端末側に搭載していない。BIOSのPXB機能の設定によって、電源がONされると即座にサーバにアクセスし「シンクライアント端末」の機動に必要なOSをRAM(ランダム・アクセス・メモリ)上にダウンロードする。その後、必要なアプリケーションのプログラムコードが逐次ダウンロードされ、ユーザーはそれを使ってオンメモリで作業することになる。

 その際、サーバに仮想デスクトップイメージを作成しコントロールするためには、ArdenceやCitrixなどのソリューションなどを利揺する必要がある。その結果、ネットブート方式では大容量のネットワークとメモリが必要となる。

 Sun Microsystemsが提供する「Sun Ray」ソリューションも、この分類に入れてもよいだろう。ネットブート方式は、画面転送型が苦手とするCADなどのI/Oが多く発生するアプリケーションの処理などにむいており、処理の負荷分散という点では従来のクライアント/サーバ方式に近い。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

自社にとって最大のセキュリティ脅威は何ですか

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]