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シンクライアントとは何か?--その定義と進化 - (page 2)

白川直哉(ITパティシエ)

2006-09-11 20:40

シンクライアントの進化

 現時点では、ネットワークコンピュータは普及しているとは言い難い。その理由はいろいろ考えられるが、「シンクライアント」の構造上、ネットワークの負荷が比較的大きく当時の社内ネットワークの能力では、十分なパフォーマンスを得られなかったことなどが原因であろう。

 1990年代の後半に国産メーカーが発売した「シンクライアント端末」は、非x86系のCPUで200Mhz程度のクロックスピードのものであった。これらはWindows CE用のブラウザを搭載していたが、限定されたアプリケーションしか使えないなどの限界があり、使用に耐えないと評価され普及には至らなかった。

 また、2000年になって、マイクロソフトがWindows NTサーバに対してターミナルサービスを提供したが、当時は別売であった。Windows 2000サーバが発売され、はじめてターミナルサービスが標準でバンドルされることになる。

 このころ、韓国製の「シンクライアント端末」などが輸入されるようになったがそれも普及には至らなかった。当時の「シンクライアント端末」が採用していたのは、x86系のCPUでやはり200MHz程度のものであった。この時点でも普及に至らなかったのは、企業にはナロー(細い)なLAN環境しかなく、また「シンクライアント端末」も非常に高価だったことが要因だ。

 さらに2003年、組み込み式OSとしてマイクロソフトからWindows XP Embeddedが提供されるようになった。Windows XP Embeddedは、Windows XP Professional版とほぼ同等のOS構成である。「ほぼ同等」というのは、Windows XP Professional版で提供されている一部のファイルが、Windows XP Embeddedでは提供されていないからだ。

 画面転送型では、HDDに比べて限定された容量のCF、またはDOMにWindows XP Embeddedを搭載するために、必要最小限のシステムファイルに圧縮し、開発ツールを使って「間引き」作業が施される。その結果、400MHz程度のクロックスピードのCPUでも非常に快適に動作させることが可能である。

 また、ユーザーの要件によってはやむをえず「シンクライアント端末」にデバイスを接続させなければならない場合も、Windows CEや組み込みLinux用には提供されていないドライバやユーティリティも特殊に開発することなく組み込むことができるというメリットがある。

 ただしその際は、Windows XP Embeddedのどのシステムファイルが必要なのかを特定し組み込む必要がある。通常この作業を、「ファームウェアのカスタマイズ」と呼んでいる。Windows XP Embeddedの登場は、「シンクライアント端末」の用途を大きく拡張することになった。同時に、CPUの能力もおよそ1GHzのクロックスピードのものまで提供されるようになっている。

シンクライアントの今後

 2005年に入って、多くのPCメーカーもこの市場に参入した。その結果、従来のPCをそのまま「シンクライアント端末」に仕立て上げた製品と、「シンクライアント端末」として専用に開発された製品とが混在するようになった。

 「シンクライアント端末」が注目されるその背景には、後を絶たない情報漏洩に対する対策、今後の内部統制強化にともなう措置などがある。また、政府は京都議定書の遵守項目としてCO2削減や開発費の削減を含むライフサイクルコストの削減に取り組む方向を打ち出していることも考えられる。

 徐々にではあるが、クライアント端末のリプレース時に「シンクライアント端末」を検討する政府、自治体、民間企業も増えている。ハードウェアの選択肢が十分そろったいま、本格導入のボトルネックになっている問題をどのように解決していくかが「シンクライアント端末」メーカーとソリューション提供ベンダーに問われている。

 従来のサーバアプリケーションをシンクライアント環境に移行するための調査や実装に関わるコスト、Visual Basicなどで書かれたクライアントアプリケーションの資産をどうするかなどがその代表的なものであろう。

 また、従来約束していたメンテナンスの手間とコストの削減には、PC時代以上に便利で中央集中管理で全端末のファームのアップデートとデバイス管理ができるツールをそろえるなど、むしろソフトウェアの提供に比重は移っている。

 ユーザーは、セキュリティにコストを支払う、特に重視されてこなかったクライアント端末サイドのコストを見積もる準備が必要になると思われる。

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