国際競争力強化に結びつくRFIDの活用 - (page 2)

藤本京子(編集部)

2006-09-22 20:46

RFIDにはその他のプロジェクトも

 ほかにも経済産業省では、RFID関連プロジェクトを積極的に進めている。ASEAN諸国を中心としてISO国際標準に準拠したRFIDの共通基盤を構築し、国際標準化提案を推進、国際市場でRFIDシステムの有効性を確認する「国際標準実現型プロジェクト」、異なるコード体系が混在する環境においてもコードの相互運用ができるプラットフォームを開発、検証する「マルチコード相互運用プロジェクト」、プライバシー保護と情報利用を両立させる技術や企業間でRFIDの情報を保護する技術を開発する「セキュア電子タグ技術開発プロジェクト」などがそれだ。

 佐々木氏は、RFIDが万能ツールではないとしながらも、「ユーザー企業が自らの事業課題を冷静に分析し、地に足のついた利用方法を見いだせば、大きな力を発揮する」と述べる。また、本格的なRFID普及のためには、「ユーザー企業の主導的な牽引力が必要だ」と述べ、こうしたユーザーを経済産業省としても最大限支援するとした。

u-JapanでRFID事業を推進する総務省

 一方、総務省ではu-Japan政策の一環としてユビキタスネットワークの整備を目指している。その中で、RFIDチップの接続および情報流通を実現するネットワーク基盤技術の研究や、RFIDからモノの情報を取り出すための技術、安心・安全なユビキタスセンサーネットワークを実現する技術など、数々の研究開発を推進してきた。

中里学氏 総務省 情報通信政策局 技術政策課 研究推進室 課長補佐の中里学氏

 総務省 情報通信政策局 技術政策課 研究推進室 課長補佐の中里学氏は、RFIDを活用した静的な情報のやりとりはすでに普及段階にあるとしている。例えば、回転寿司の皿に取り付けられたタグでの自動精算や、JR東日本の「Suica」による自動改札システムなど、単一システムで情報共有をするタイプのものだ。

 それが、「今後RFIDはシステム間連携の方向に進む」と中里氏。履歴情報を伴う流通が広がりつつあり、その先にはリアルタイムに変化する情報にも対応するインテリジェントモデルが登場するなど、「RFIDにひもづく情報はより高度化する」(中里氏)というのだ。

 RFIDの高度な利用法が期待される一方で、課題となるのはセキュリティだ。セキュリティ対策の一環として総務省と経済産業省は、2004年6月に共同で「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」を策定した。ガイドラインでは、消費者へ物品が手渡された後もタグが装着されている場合、その事実や記録情報等を説明するよう努めることや、タグの情報とデータベースを連携させて個人が特定できる場合は、個人情報保護法の適用を受けるといったことなどが定められている。今後も各分野における実証実験を通じ、ガイドラインは適宜更新される予定だ。

 ユビキタスセンサーネットワーク技術の研究開発も、タグの高度利用を意識したものだ。2005年から2007年の3年間を研究開発期間として進めているものだが、多数のセンサーがタイミングを調整しながら正確なデータを確実に伝えるためのユビキタスセンサーノード技術や、センサー同士が自動で通信相手を探して接続できるようになるセンサーネットワーク制御・管理技術、多数のセンサーから収集されたリアルタイムデータを選別し、意味のある情報を抽出する大量データ処理・管理技術などの研究が行われている。

 センサー技術の実証実験としては、2006年2月に大阪市内の小学校で行われた学童見守りシステムがある。これは、防犯機能と通信機能を備えた「見守りセンサーノード」を自動販売機や校門に設置、RFIDタグつきのランドセルを持つ児童がセンサーを通過した時点で保護者に連絡が行くといったシステムだ。

 RFIDに関する基盤技術やアプリケーションの開発、またそれらを実際に試す実証実験の数は今後ますます増加することが見込まれる。これは、「次にやってくるユビキタスネットワーク社会に向けた下準備だ」と中里氏。同氏は、「研究とシステム開発、実証実験を循環させることで、イノベーションが実現する」と述べた。

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