この背景にあるのは、Linuxの慢性的な技術者不足だ。また、OSそのものはオープンソースであることから無償で入手できるが、サポートが必要になると、とたんにWindowsと同等の価格になってしまうことも普及の足かせとなっていた。さらにLinuxは、UNIXをベースとしていることから、Windowsしか知らないユーザーにとっては敷居の高いものだった。
このような状況にしびれを切らせたEllison氏は、Oracle自らでLinuxのサポートに乗り出すことになる。そこで2002年にスタートしたのが「Unbreakable Linux」プログラムだ。このプログラムでは、Linuxの開発、テスト、配布を行うための専任チームをOracle社内に組織し、専門知識を蓄積するために、パフォーマンス、拡張性、信頼性、セキュリティなどにフォーカスしたLinuxカーネルに対する拡張を行っている。
それでも不満の残るEllison氏は、「最大の課題は、真のエンタープライズサポートがLinuxにはないためだ。現状では、もしカーネルにバグがあっても、現在使用している次のバージョンでしか対応されない。これでは企業システムには使用できない」と話す。
「エンタープライズ分野では、今使っているバージョンで対応できなければ意味がない。しかしそれには高額なサポート費用が必要なこともLinuxの普及拡大を送らせている。また、複雑なライセンス体系もエンタープライズでの利用を妨げている。このような課題をすべて解決するのが“Unbreakable Linux 2.0”だ」(Ellison氏)
Unbreakable Linux 2.0では、Red Hat Linuxユーザーであれば(Oracleユーザーでなくても)簡単にサポートをOracleに移行することが可能。バグ対応も、IPの問題も、Oracleがサポートしてくれる。最大の特長は、サポート価格だ。Ellison氏は、「我々は、Red Hatの半分以下の価格でLinuxをサポートする」と話している。
価格は、最も基本的なサポートを提供する「Network Support」が1システムあたり99ドル、Red Hatの最高レベルのサポートと同等の「Basic Support」が2CPU/1システムあたり399ドルより、Oracleのデータベースサポートと同等のサポートが提供される「Premier Support」が2CPU/1システムあたり1199ドルより。
「さらに2007年1月31日までの期間、すべてのサポート価格を50%オフにするキャンペーンも実施する」という、某テレビショッピング顔負けの宣伝活動をEllison氏自ら展開。これには場内、大ウケけだった。なお、Oracleユーザーは、90日間無償でこのサービスを試用できる。
Ellison氏は、「ここで重要なのは、Linux市場の細分化は避けるという点だ。Oracleは、Red Hatとは違うLinuxを作ろうとしているのではなく、あくまでもRed Hat Linuxのサポートを行っていく。Red Hatが新しいバージョンを出せば、Oracleも最新バージョンをサポートする」ことを強調した。
Unbreakable Linux 2.0プログラムには、Dell、Intel、HP、IBM、Accenture、AMD、Bearing Point、EMC、BMC、NetAppが賛同を表明。今後、SUSE Linuxへも、同プログラムの適用が計画されている。