アーキテクチャがもたらす課題を解決する唯一の方法
丸山氏に続いて登壇した日本オラクルの保科実氏は、同社の次世代ITプラットフォーム「Oracle Grid」とNECとの戦略的協業に関して説明した。

「顧客は度重なる非効率なリソース投資と、バラバラに構築してきたシステムのメンテナンスにおけるコスト圧迫に疲弊している」と保科氏は語る。稼働しているシステムのハードウェアには、ピークに合わせて余剰リソースを投入しており、当然バックアップも用意している。また、アプリケーションごとに分断されたサーバリソースが、運用管理の複雑性を産んでいるとも指摘。「多大なハードウェア投資が、それに合わせたソフトウェアの投資を呼び、膨らむライセンスフィーとメンテナンスコストを押し上げている」と同氏は強調する。
それは、シングルアーキテクチャ・プラットフォーム的な考えが活用されておらず、個別のシステムを導入した結果、システムごとにプラットフォームが分断されてしまっている状態なのだという。分断されたアーキテクチャでは、システムダウンのリスクや、障害発生時の切り分けが困難といった運用管理上のリスクも増大する。また、内部統制の観点では、ID管理やアクセス制御、監査ログ分析などが一元化できない状況で、セキュリティの脆弱性ももたらされる。
「これら、コストの肥大化、運用管理上のリスク、セキュリティ上のリスクといった、現状のアーキテクチャがもたらす課題を解決するには、統合プラットフォームで真の次世代システム基盤を目指す以外方法はない」(保科氏)
10gのリソース共有にNECのコントロールが補強
オラクルは、「RAC」(Real Application Clusters:1つのデータベースを複数のサーバで共有するクラスタリング技術)を開発することによって、スケールアウトによる拡張性や可用性を向上させてきた。Oracle 9iのリリースから5年を経過した現在、「可用性」と「拡張性」を両立するデータベースとして、かなり標準化されてきているという。
そして次に提唱したのが、Oracle 10gの名前の根拠となった「グリッド」という概念だ。RACは単一アプリケーション基盤のプラットフォームだったが、グリッドは複数のアプリケーションに対応する統合アプリケーション基盤のプラットフォームといえる。
複数のデータベースでサーバリソースを共有し、自動再配置、最適化を行いながら、ハードウェアコストを最小化するのがグリッドの本分である。これをコントロールするのが、Oracle Enterprise Managerの「Grid Control」である。さらに、10gでは、データベースサーバだけではなく、アプリケーションサーバエリアのリソース供給まで実現する。これに、NECの提供するWebSAMのSigmaSystemCenterからコントロールする環境を構築できた点が、今回の協業の大きなポイントだと保科氏は評価する。
戦略的技術協業が顧客の自由な進化を支える
また、保科氏はオラクルの次世代インフラのロードマップも示した。それによると、10gによる共通データベース基盤、およびアプリケーションサーバレイヤまで拡張する共通インフラが出来上がった今、最終的には、アプリケーションサーバレイヤとデータベースサーバレイヤの全リソースを共有可能なグリッドコンピューティングを目指しているという。NECの「REAL IT PLATFORM」とオラクルの「Oracle Grid」とによる協業の実現で、その計画は大きく前進したことになる。

従来は製品の出荷・保守での協業が中心だったNECとの関係が、今回の戦略的技術協業(STA)でさらに拡大すると保科氏は力説する。
保科氏は「両社の開発陣が、互いの製品の開発プランや技術情報を共有しながら、次の世代で必要となるシステム開発を共同で行っていくことで、顧客の自由な進化を支えるインフラを提供したい」と語り、講演を締めくくった。