内部統制の実現にITをどう活用するか - (page 2)

友永慎哉

2006-11-09 18:09

 米国版と日本版に共通するのは、内部統制の強化をうたいながら、具体的なやり方を明記していないことだ。違いは、日本版SOXではITの活用が明記されていること。いずれにしても、大量かつ複雑なデータをITを利用することなく処理することは不可能だ。

 それでは、内部統制を実現するためにITをどう活用していけばいいのか。ここでは、内部統制の「目的」を明らかにし、それを達成するための「手段」としてIT製品をどう使うかを、階層的に考えてみたい。

 日本版SOXに対応する際の目的は「信頼できる財務報告を実施すること」。ここでは、会計や財務分析などのアプリケーションが当てはまる。もし子会社を持つ企業なら、各社から報告された財務データを統合する連結会計用のアプリケーションなども必要になるかもしれない。

 一方、財務はビジネスの結果であると考えると、「手段」として最上位にくるのは「ビジネスを効率化すること」である。ここで注目すべきITといえば、データをビジネスに役立てるためのツール「ビジネス・インテリジェンス(BI)」などが挙げられる。BIを活用することで、企業の複数の部門の状況を横断的に把握できる。収益性に欠ける部門や、近い将来に成長が期待できる製品を見つけることも可能だ。

 「ビジネスを効率化する」ために必要となるのは、部門ごとの具体的な業務の効率化を図るためのツールである「業務アプリケーション」。業務アプリケーションにより、マーケティング部門なら顧客満足度の管理、生産管理部門なら在庫水準や生産計画の立案などを実施できる。また、「ビジネスプロセス管理ツール」などもこの階層に含まれる。

 さらに、業務アプリケーションやビジネスプロセス管理ツールを正確かつ安定的に運用するためには、データを統合したり、システム間の連携を図るための「アプリケーション基盤」が必要となる。

 具体的には、EAI(企業アプリケーション統合)や、機能を部品化して必要に応じて新たにアプリケーションを構築するSOA(サービス指向アーキテクチャ)を実現するためのアプリケーションサーバ製品、データの抽出やクレンジングを行うETL(Extract/Transform/Load)ツールなどがここに当てはまってくる。

 この「アプリケーション基盤」を支えるためには、データベース、OS、サーバマシンやストレージなどのハードウェアを含めたITインフラを整備しておく必要がある。中でも、企業が持つあらゆる情報を電子化する動きが強まってくることを考えると、ストレージシステムの整備などの需要が高まりそうだ。

 このように、日本版SOX法の制定はITの役割をこれまで以上に大きくすることが見込まれる。法に上手に対応することに加え、ITのあり方を考える良い機会であるととらえられる企業であることが望まれる。

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