アイデンティティ(ID)を連携して管理するための標準仕様の確立を目指し、2001年9月に設立されたLiberty Alliance。IDの連携とは、システム同士を連携させ、信頼できる会社やメンバー間でIDのやり取りをすることで、シングルサインオンの実現につながるほか、複数の組織でIDを管理するため、一カ所に障害が起こってもシステムが機能しなくなるといった事故が避けられるという利点もある。IDの連携型モデルに対抗する考えとしては、Microsoftの「Passport」に代表されるように、すべてのIDを1社で管理するという集約型モデルがある。
Liberty Allianceはグローバルな組織だが、日本国内での活動も活発で、2005年10月には日本分科会も結成した。2006年の新しい動きとしては、1月に「Liberty People Service」の仕様を公表し、10月6日に仕様が確定したことがある。
People Serviceとは、「Liberty Identity Web Services Framework(ID-WSF)2.0」の中核となるもので、ユーザー同士が連携してブックマークやカレンダー、写真共有サービスなどを管理できるようになるものだ。ユーザーが自ら設定したプライバシー制御の方法に基づいて、別のWebサービスアプリケーションが利用できる。
そのPeople Service仕様の共同執筆者で、Liberty AllianceのTechnology Expert Group共同議長を務めるPaul Madsen氏に話を聞いた。
--Poeple Serviceの構想はいつ頃持ち上がったのでしょうか。
2004年頃だったでしょうか。通常Libertyでは、仕様を決める前に市場のニーズを考えます。標準化について検討するグループと、市場について検討するグループが、この仕様があればこういった課題が解決できるのではないかと議論するのですが、People Serviceの構想は、複数のID間でのやりとりが増えているということから持ち上がりました。
--People Serviceは、これまでLibertyが作り上げてきたシングルサインオンなどの考え方とどこが違うのでしょうか。
まずLibertyが最初に策定したアーキテクチャは、シングルサインオンをサポートする「Liberty Alliance Identity Federation Framework(ID-FF)」です。次が「Identity Web Services Framework(ID-WSF)」で、最初のバージョンのID-WSFは、1ユーザーが異なった種類のIDを共有するためのものでした。ID-WSF 2.0では、複数ユーザーのIDをサポートし、その中核としてPeople Serviceが定義されているのです。ID-WSF 2.0の最終版は、10月6日にまとまったばかりです。
People Serviceもこれまでに定義されてきたものも、ユーザーのプライバシー保護やID管理の容易性に着目しており、概念は変わっていません。ただ、People Serviceでは、これまでとは扱うIDの数が違うのです。例えば、カレンダー共有サービスで、特定のユーザーとカレンダーを共有したい場合、共有したい人数分のIDが必要となります。Web 2.0時代では、ユーザー同士がコンテンツを共有するケースが増えます。複数ユーザーのID管理に対応するのがPeople Serviceです。
--People ServiceはID-WSF 2.0の中核といいますが、People Serviceの他にID-WSF 2.0で定義されているものはありますか。
Discovery Serviceがあります。ユーザーは、複数のサービスを利用する際、サービスAに対しては生年月日を提供し、サービスBには電話番号を提供するといったように、サービスごとに異なった情報を提供しています。病院が健康状態を把握し、宅配ピザ店が住所を把握しているのと同じです。利用するサービスが増えると、どこにどの個人情報が存在するのかユーザー自身も把握しきれませんから、検索機能が必要となります。