中小企業のアプリケーション展開:堅実性とライフサイクルコストを考える - (page 2)

文:Deb Shinder 翻訳校正:吉井美有

2006-12-19 10:00

シンクライアントからアプリケーションにアクセスする

 アプリケーションをターミナルサーバにインストールしておいて、ユーザーは、システムリソースをほとんど必要としないシンクライアントを用いてそのサーバにアクセスするようにする。こういった形態として一般的なものを以下に挙げる。

  • Windowsターミナルサービス。これはWindows 2000サーバおよびWindows Server 2003(Web Editionを除く)に組み込まれており、RDP(Remote Desktop Protocol)を使用している
  • Citrix Presentation Server(旧称はCitrix MetaFrame)。これはICA(Independent Computing Architecture)プロトコルを使用している
  • VNC(Virtual Networking Computing)。これはRFB(Remote Frame Buffer)プロトコルを使用している

 これらの形態のいずれを選択しても、アプリケーションをターミナルサーバのみにインストールして稼働させておくことによって、複数のユーザーがシンクライアントから同時にそれらのアプリケーションにアクセスすることが可能になる。

 アプリケーション配備にシンクライアントを用いる方法を選択すれば、ターミナルサーバへのアクセスにクライアントライセンスが必要となるものの、ハードウェア費用の低減とセキュリティの集中管理が可能になるため、企業としてはコストを削減できる。

アプリケーションサービスプロバイダー(ASP)を利用する

 ASPはソフトウェアアプリケーションをそのサーバ上で稼働させ、それらのアプリケーションをインターネット経由でユーザーにアクセスさせ、年間使用料や月間使用料、あるいは使用回数に応じた料金を徴収する。ASPによってホスティングされているアプリケーションには、ウェブブラウザを介して、あるいはユーザーのコンピュータにインストールされた専用のクライアントソフトウェアを使ってアクセスすることができる。

 ASPを利用することのメリットは、すべてのアプリケーションの保守、アップグレード、トラブル対応がASPによって行われることで、ユーザー企業側でIT部門の人件費や間接費を節減できるという点にある。

 ASPを利用したアプリケーション配備モデルを選択することで、企業はソフトウェアライセンスにかかる費用の全額を負担する必要がなくなるため、システムへの初期投資を大幅に削減することができる。この費用削減の効果は、アプリケーションの価格が高く、その使用頻度が比較的低い場合に特に顕著となる。

 アプリケーションを購入するかわりにASPのサービスを利用することのデメリットは、インターネット接続に障害が生じた場合に、それらのアプリケーションを使用できなくなる点である。

企業の成長を考慮した戦略を構築する

 多くの小規模企業が、各ワークステーションにスタンドアロンのアプリケーションをインストールし、企業規模が大きくなるとサーバベースのアプリケーションに移行している。しかし、ASPを利用する方法は初期投資を抑え、実装を容易にすることができるため、予算に余裕のない小規模企業にとっては非常に費用対効果が高いのである。このことは、ソフトウェアが専門的なものであったり、プロプライエタリ製品あるいは非常に高価な製品であったりする場合に特に当てはまる。

 「サービスとしてのソフトウェア(SaaS)」という方法を選択するもう1つのメリットは、企業に合わせて成長させるのが容易だという点にある。大半のプロバイダーは、ユーザー数が何人に増えようともサービスを提供できるだけの能力を備えているため、顧客である企業は利用ユーザー数が増えようとも、サーバの追加購入や、追加のデータベースサーバといったサポートサービスの追加を心配する必要がない。

 今後の成長を視野に入れ、あなたの企業にとって最適な戦略を構築するためには、以下のような点を評価しておく必要がある。

  • 特定のアプリケーションを使用するユーザー数
  • バージョンアップがなされた際にアップグレードを行うことの重要性
  • ネットワークやインターネットアクセスの可用性や信頼性
  • ハードウェアリソース
  • 予算に対する考慮

まとめ

 あなたの企業のユーザーにアプリケーションを配備する方法は複数あり、それぞれにメリットとデメリットがある。そういったことを考慮した上で綿密に計画しておくことによって、企業ニーズが変化しても利用可能性、セキュリティ、コストのバランスを最適に保ち続けることができるのである。

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