2007年の展望--注目が集まるEnterprise 2.0 - (page 2)

平古場浩之(みずほ情報総研)

2007-01-01 08:00

 また、KnowWhoデータベースのように、コミュニティに関係なく、利用者のプロフィール情報を中心に、報告書などの情報やノウハウを紐付けて蓄積する「誰が何を知っているか」データベースもある。

 しかし、基本的にはKnow Whoは、報告書などの成果を蓄積するための仕組みであり、報告書を作成するまでに至るプロセスや、その作成に関わった関係者に関する情報までは蓄積できない。一方、ブログやWikiでは、利用者が自由に記事やメッセージ、ワークファイルをソフトウェア上に書き連ねていくことで、報告書を作成するまでに至るプロセスを可視化することができる。

 このように、Enterprise 2.0を実現するためのプラットフォームでは、従来のソフトウェアでは実現が難しかった要件を、Web 2.0で活用されている技術群によって実現していこうとするものである。

 インターネット技術を企業システムへ転用することについては、セキュリティ面やユーザー管理機能の強化などの課題が残るが、最近では、Connectbeamをはじめ、こうした課題をクリアしたパッケージ・ソフトウェアも登場している。また、MicrosoftのSharePointやIBMのエンタープライズWiki、BEAのエンタープライズタギングなど、大手ソフトウェアベンダーからもWikiやソーシャルブックマーク機能を具備するグループウェアやポータルソフトウェアなどが年内に発表される予定である。

 Web 2.0的な技術による単なる既存機能の置き換えなのかどうか、これらのベンダーの動向にも注目しておきたい。

 また、Enterprise2.0で実現するソーシャルソフトウェア上でのコラボレーションの内容は、きわめてヒューマンセントリック(人間中心)な作業の集合である。しかも、これらは企業内外に存在する、さまざまな利害関係者との関係や作業プロセスの過程が蓄積されている。もし、その連続性や関連性が可視化できれば、生産性や革新性を促す大きなビジネスチャンスが期待できる。

 Enterprise 2.0の本質はソーシャルソフトウェアや新規技術の採用だけではない。これらの技術をどのような場面で活用すべきか、また、どのようなイノベーションを創出するために連携すべきチャネルが企業内あるいは外部に存在するのかの見極めが重要でなる。ビジネス上での活用シーンを想定して、システム計画と検証を適切におこなう必要があるだろう。

 企業の規模や、ソーシャルプラットフォームを適用するコミュニティの範囲のベストプラクティスは存在しない。このため、Enterprise 2.0を採用することが、企業にどの程度のインパクトをもたらすか、想定することは難しい。しかし、この取り組みが企業内だけではなく、顧客やパートナーをも巻き込んだコミュニケーションやコラボレーションが実現できれば、Web 2.0にも劣らない価値が得られるに違いない。

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