8.業務タイプ別のハードディスクイメージを作る
新環境へ移行する際には、部署ごとの業務で使用するハードディスクイメージをタイプ別に作っておくとよい。同じ環境のPCを多数用意する場合に便利なのはもちろん、部署の人員が増えた場合にも、必要なPCをすぐに用意できる。また、運用中にトラブルがあった場合でも、ハードディスクイメージがあれば再インストールのための作業時間を短縮できる。
9.ユーザー教育を行う
デスクトップOSの移行にあたっては、ユーザー教育が極めて重要だ。従業員が新たなユーザーインターフェースや操作手順に慣れるまでは、一時的に生産性は低下する。一般的にユーザー教育は軽視されがちだが、この生産性が低下する期間を短縮する最も効果的な手段である。
以上のポイントを網羅すれば、デスクトップOS移行によるリスクを最小化できるはずだ。
最後に、デスクトップ移行の3つパターンについて考えてみよう。
パターン1:同じPCを使い、OSを含めてソフトウェアを上書きアップグレード
一般に「インプレイスアップグレード」と呼ばれる、比較的容易な移行方法だ。OSに限らず、ほとんどのパッケージソフトでは、メーカーがアップグレード用のプログラムを用意しているため、作業にあたってはハードウェアの対応とディスクの容量に注意しておけばよい。
ただし、旧環境のトラブル、感染してしまったマルウェアなどをそのまま引き継いでしまう恐れもあり、アップグレード後にそのことに気づいた場合は、トラブルシューティングに手間がかかってしまう。
パターン2:同じPCを使い、クリーンインストールしてからアップグレード
旧環境からトラブルを引き継がないように、ハードディスクを初期化して、新たにOSとアプリケーションを入れなおすのがこのパターンだ。ユーザーデータは、いったん別のPCに退避しておき、環境を入れ替えた後に戻す。データの移行には若干の手間がかかるが、旧環境から不要なトラブルを引き継ぐ事態は避けられる。
パターン3:ハードウェアごと入れ替える
リースアップの際の入れ替えでは、一般的にこのパターンが多い。1や2と違い、ハードウェア入れ替えの場合はライセンスの問題があるので下調べが必要だ。プレインストールモデルの場合は、別のPCにOSやアプリケーションといったソフトウェアを移すことが禁止されている場合が多い。
もうひとつの注意点は、移行元のPCのバックアップが完璧でも、新たなハードウェアでその環境がリストアできるとは限らないことだ。新たに導入したハードウェアの構成によっては、せっかく作成したバックアップデータが無駄になることもある。可能であれば、移行前のハードウェアも一部残しておけば安心だ。
これらの移行パターンには、それぞれにメリットとデメリットがある。全社で一斉に行う場合もあれば、複数のパターンを組み合わせて実施したい場合もあるだろう。ただし、いずれの場合も、会社全体の環境を視野に入れた立案と、計画的な実施が、移行の成否やその後のスムーズな運用のカギとなることは間違いない。