クアッドコアプロセッサに関して、Advanced Micro Devices(AMD)は「果報は寝て待て」ということわざを信じているようだ。
数年にわたってAMDの後塵を拝し続けてきたIntelは、2006年11月、サーバー用クアッドコアプロセッサ「Xeon 5300」(開発コード名「Clovertown」)のリリースによってAMDの機先を制した。しかし、AMDでサーバおよびワークステーション製品を担当するコーポレートバイスプレジデントのRandy Allen氏によれば、2007年中ごろにAMDが出荷を予定しているクアッドコアプロセッサ「Barcelona」(開発コード名)は、同時期に市場に出回っているClovertownチップより格段に高速なものになるはずだ、と語る。
Allen氏は「さまざまな種類の作業において、BarcelonaはClovertownを40%上回る性能を見せてくれるはずだ」と述べている。また、現行のAMD製デュアルコアプロセッサ「Opteron」と比べても、クロック周波数が同じならBarcelonaの方が3.6倍の「浮動小数点」計算をこなす能力があるという。
リリース前に製品の性能をアピールするという戦略はAMDの専売特許ではない。Intelも「Xeon 5100」(開発コード名「Woodcrest」)発表の際には、AMDの製品より少なくとも40%高い性能を持つとうたっていた。
Mercury Researchのアナリスト、Dean McCarron氏によると、クアッドコアプロセッサの投入によってIntelは勢いを回復したが、その貢献は単なるイメージ向上にとどまらないという。McCarron氏は「今の段階で、Clovertownは驚くほど短期間にかなりの販売実績をあげているとみられる。宣伝倒れには終わっていない」と述べた。
Intelといえば、22日にはSun Microsystemsがサーバ用x86プロセッサの供給をAMD1社に依存する体制を改め、Intelのプロセッサを搭載したサーバの販売を再開すると発表した。Intelの広報を担当するBill Kircos氏は「競争相手には言いたいだけ言わせておこう。その間にわれわれは先へ進む」と語り、Intelはプロセッサの性能およびエネルギー効率を現行製品よりも向上させていくと付け加えた。
2006年第3四半期にはIntelは競争力を取り戻し、AMDに奪われたサーバー用プロセッサの市場シェアを奪い返した。第4四半期に関する報告はまだMercury Researchから出ていないが、AMDは先日、同社製プロセッサの販売価格が「著しく低下した」ことを認めている。
Technology Business ResearchのアナリストJohn Spooner氏も、Clovertown(=Xeon 5300)の投入により「IntelはAMDに対し、価格引き下げの圧力をかけることが可能になった。クアッドコアプロセッサであるXeon 5300シリーズの大部分をデュアルコアプロセッサのXeon 5100シリーズとほぼ同じ価格設定とすることで、Intelはコアあたりの価格の低さをセールスポイントにできる」と指摘する。
「一方のAMDは、Barcelonaがリリースされるまでの間に(Intel製プロセッサへの)移行を考えている人たちを満足させるため、Opteronの価格を引き下げることで対応する必要に迫られる。Barcelonaの性能への言及は、Intelの勢いを当分の間食い止めるための1つの手段だ」(Spooner氏)
しかしAMDでは、Intelのようにデュアルコアのプロセッサを2つパッケージする手法ではなく、1つのチップに4つのコアを載せる方式を採用した点など、Barcelonaの技術的メリットを強調する。AMDは同社の設計手法を、「モノリシック」(一体型)あるいは「ネイティブの」クアッドコアと呼んでいる。
Allen氏によると、顧客はプロセッサがモノリシック設計か、あるいは別々のプロセッサを組み合わせたものなのかについて気にしていないが、性能には非常に関心を持っているという。「われわれは、モノリシック設計の機能と性能からして、この選択が明らかに正しいという結論に至った」と、Allen氏は語った。