OSS普及には新しい価値観をもった人々がリーダーシップを--日本OSS推進フォーラム - (page 3)

谷川耕一

2007-01-30 14:59

 「これは、論理数学的なテクノロジを使ったものになるだろう。論理を記述すればコンピュータですぐに動かせるようなもので、OSSを使いその上で実現できれば世界の3Kを解消できるオープンソースのツールになる。OSとの連携でこれが実現できるともっと面白いし、OSSらしさが出てくる」(桑原氏)

 ツールの活用で時間のかかる単純労働部分を減らし、技術者はより知的レベルの高いところへと変化、成長していかなければならないということだ。

OSSの協調と競争、有償と無償

 自由であることは、OSSの大きな魅力のひとつだ。その自由があるからこそ、多くの技術者が金銭的な見返りがなくてもその開発に時間も情熱もつぎ込んでいる。自由であること、束縛されないことで力を発揮する部分がある反面、最終的に誰がどういう形で責任をとるのかということは曖昧になる。コミュニティが多いのはOSSにとって力となるが、逆に無責任なコミュニティを増やすことにもなりかねない。

 この部分の解決には、OSSだから何でも無償で提供しなければならないというのはむしろ弊害になる。多くの人の協調によりよいものができあがったならば、それは有償で対価を得てもいい。競争の結果よりよいものができるのならばもちろん有償でもいいし、場合によっては無償で提供する人もいるかもしれない。

 要は、協調の成果は無償で競争は有償と固定的に決まっているのではないということだ。OSSであっても知財としての価値が高いものが生まれたならば、有償にしてもいいと桑原氏は言う。

 「OSSの精神は無償なのではなく、オープンだということだ。OSSの流れのなかで、無償のものは増えていくだろう。とはいえ、経済原理が働かないと企業はなかなか動けない。協調と競争をバランスよくやっていくためには、OSS推進フォーラムのプロジェクトのなかで、リファレンスOSを求めていくというのもいいと思う」

 大手の国産ハードウェアベンダーにとっては、“迷い”の部分もあり、OSSを推進し普及させていく活動の中核者としては、思い切った動きになかなかつなげられない。レガシーシステムで培ってきたビジネススタイルの先に、OSSを活用するビジネススタイルを位置づけてしまうと、新たな1歩が踏み出せずITの革新には至らない。集中、分散が同時並行する道がユーザー、ベンダーが最もOSSの恩恵が得られる道でありそうである。

 過去の経験の意味をよく整理して理解することも必要だが、発想を変え新しい価値観をもった人々がリーダーシップをとり先頭に立つことが現時点ではより重要ではないだろうか。そして、過去の経験をもつ人々は、どこまでその影にとらわれないようにできるかで、今後のOSS普及期の新しい競争に生き残れるかが決まるのだろう。

日本OSS推進フォーラム代表幹事の桑原氏 日立製作所の特別顧問であり、日本OSS推進フォーラム代表幹事の桑原洋氏。

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