国家レベルでOSSプロジェクトを推進する韓国 - (page 2)

小川陽平(編集部)

2007-02-13 16:54

OSS基盤の電子政府の目標と推進戦略

 次にLEE氏は、OSS基盤の電子政府が目指す目標と推進戦略について説明した。それは、OSSを基盤とした電子政府を構築し、予算編成と執行を革新すること、国家の戦略産業としてOSSを活用した技術強国の仲間入りを目指すこと、オープン型システムの早期構築と安定したシステムを実現することだ。

 こうした目標を1つずつ達成することで、究極的には「オープン型の電子政府」、「参加型の電子政府」、「経済的な電子政府」を目指すと、Lee氏は語った。

OSSの拡大案

 Lee氏は、その大きな目標に対する韓国政府の取り組みとして、公共部門の情報化計画、電子政府事業、情報化事業など、大統領委員会と共同ですべての省庁に対してOSSの使用を推進支援していると説明。それら施策により、地方自治体などでは自発的にOSSに対するフォーラムが作られるまでになったという。

 そして、優秀な事例として以下の5つを例に挙げた。

  • 内政プロジェクト
    教育情報システムで、16の市、都の教育庁、中央総括センターに設置。データベースサーバ、ウェブサーバ、セキュリティサーバほか、多くのOSSによるシステムを設置、運用。
  • 総合防災気象情報システム
    本庁、地方の気象庁、気象台レベルに178台のLinuxベースのシステムを導入し運営。気象分析に大きな成果を上げている。今後は世界レベルでの情報共有ができるよう、様々な施策を行う。
  • 政策委託研究システム
    重複する研究や研究結果などを効果的に活用できるように、省庁間での報告書を総合的に処理できるよう、政策、資料などを自動でデータベース化するシステムを作成。
  • 自治会全般に対するITインフラの運営
    市、郡、区の情報化と共通システムの構築。
  • 広州、広域市での情報化都市
    ・ 韓国のソフトウェア開発の拠点となるべく、インフラを整備。

 特にLee氏が大きく取り上げたのは、広域市の情報化都市プロジェクトだ。このプロジェクトは、人材育成や、ここで生まれた技術の事業化を推進し、21世紀の北東アジアのソフトウェア開発の中心都市となることを目標にしている。

 すでに大まかな都市計画設計は終了しており、現在は具体的な事業推進の段階に入っている。2010年までに都市の情報インフラの60%をOSS基盤として構築するとなっており、また同時に都市のPCの80%をOSSを利用したものにするとしている。

 このように、様々な施策を検討し実施してきた韓国政府は、引き続きOSSの推進を計ることで、国家の情報化予算の20%以上を削減することができ、電子政府化によるシステムの相互運用による海外進出と輸出促進が可能になるとしている。

 そして何より、海外の技術に従属することなく、IT分野での安全性と独立性を確保することができ、国内のIT産業のインフラを国産化できるOSSは、引き続き国家レベルで推進をはかるとしている。

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