キャリアからミッションクリティカルへ
こうした情報系でのLinuxの浸透に合わせて、今後はキャリア系の世界でもLinuxの利用が進むというのがミラクル・リナックスの考えだ。
「特に、最近のIPテレフォニーにおけるSIPサーバが今後普及していくと、そのOSはLinuxということになります。マーケットのボリュームが大きいことから、そこにもわれわれのビジネスの勝機があるのではないかと思っています」(佐藤氏)
同氏は、「この市場は何しろ台数が違うのです」と言う。その言葉にあるように、現在、国内市場で稼働するLinuxサーバの数はせいぜい数十万台というオーダーだ。しかしそれに対し、PBX(構内交換機)は2桁も違う1000万台を越えているというのが一般的な見方である。
「PBXがインターネットプロトコルを基盤としたSIPサーバに替わっていくときの、そのマグニチュードというのはすごいものがあると思うのです。そちらにも僕らは手を広げていきたいと思っています」と佐藤氏。
現実に、同社においてもキャリア系でのビジネスが始まっている。しかし、そこで求められるのがLinuxサーバOSである「MIRACLE LINUX」の信頼性や可用性、そして拡張性だ。いわゆるRAS、つまりReliability、Availability、Serviceabilityである。
「ここが僕らのテクノロジのキーポイントです。情報システムのサーバのLinuxであろうが、キャリア系のLinuxであろうが同じです。われわれの現在のMIRACLE LINUX 4.0(Asianux 2.0)は、OSDLが標準化を進めているキャリアグレードLinux(Carrier Grade Linux:CGL)をいち早く取得しているのです」(佐藤氏)
同社のLinuxは、いわゆるファイブナイン(99.999%)の可用性を備え、OSDLからはCGL、つまりキャリアでも使える信頼性を持っているLinuxであるという“お墨付き”をもらっている。これはキャリアだけでなく、その一方の、企業のミッションクリティカルな分野でもMIRACLE LINUXが十分その使用に耐えるということを示している。
組み込み、アプライアンス系の分野が急浮上
佐藤氏は、今後のテーマとしてセキュリティを上げている。
「セキュリティは今日的なテーマです。今でもセキュアOSなどの取り組みがありますが、構造的に強いということでシンクライアントのモデルがあります。このシンクライアントへの対応という要望がわれわれにもかなり来ています」
すでに、同社は2005年からシンクライアントへの対応を積極的に進めている。USBメモリに同社のMIRACLE LINUX のコンパクト版を搭載、これをPCに差し込めばブートされそのMIRACLE LINUXのコンパクト版が自動的に起動するという仕組みだ。
ユーザーにはその状況が分からないものの、IDを入力すればセキュアな環境で作業が行えるようになる。今セキュア環境が必要なビジネス系で普及し始めているという。
「各メーカーが、さまざまなシンクライアントターミナルの開発を進めていますが、既存のPCを利用できてセキュリティに強いシンクライアント用のOSとしてLinuxが注目されています」と佐藤氏。同社がそのコンパクト版LinuxをOEM供給し、各ベンダーがこうしたソリューションをすでに提供している。これもLinuxの新たな応用分野である。
佐藤氏は、「このマーケットも非常に大きいのです。それぞれのPCがディスクを持っているのでセキュリティが問題になるのであって、シンクライアントにすればそうした問題が解決するわけです。Linuxのすそ野が広がっています」と今後に期待している。
このシンクライアントに代表されるように、これまでのような情報系のサーバ用OSとしての普及だけでなく、この分野は今後のLinuxの市場を拡大する大きな動きに結びつきそうだ。IT、コンピュータに加えて、家電分野にまでLinuxが広がればきわめて大きな市場が形成されることになる。
MIRACLE LINUXでは、次のバージョンで仮想化技術とともにセキュリティをさらに強化する計画だ。