企業向けPLCは限定的な利用に限られる?
PLCは今のところ、コンシューマーを対象にした宅内ネットワークとしての利用を前提に、各社が製品やサービス提供を開始した段階にある。
一方、企業向けについては、NECグループと住友電気工業がPLC機器を使ったネットワークインテグレーション事業に参入を表明。また関西電力系のプレミネットがビルや工場、ホテル向けにサービス提供を開始する予定といった動きがある。
企業向けにPLCを導入する際に想定される場所は、オフィスや一部の会議室、受付、倉庫、工場などだろう。PLCはLANケーブルの敷設が不要という手軽さが最大のメリットだが、特に企業向けではコンシューマー向けに比べて要求される性能や機能も違ってくるので、クリアしなければならない問題は多い。
例えば、ビルの中に張り巡らされた電力線の接続状況は家庭内よりも複雑であり、配線の分岐やノイズ源となる要素も多い。たとえ隣同士のフロアであっても、配電系が異なることもあるし、工場や公共施設では電源コンセントの配置が限られている場合もあるだろう。
また、中規模のビルやホテル全体に対しての適用も考えられるが、会議室やミーティングコーナーなどの部分的な適用よりも規模は大きくなり、PLC機器(子機)の接続台数も増える。したがって、無線LANのアクセスポイント設置と同様に、子機の配置を考え、場合によっては信号を増幅するためのリピータを利用して中継するなど、PLCならではのネットワーク設計のノウハウが必要になってくる。さらに、セキュリティやサービス品質(QoS)などに対する要求もコンシューマーレベルとは比較にならない。
こうした企業ユース独特の課題に加えて、無線LANが既に企業内ネットワークとして普及しつつある。この企業向け無線LANにしても有線LANとの適材適所による使い分けがなされている現状で、今後、PLCが企業内ネットワークとして浸透するとすれば、有線LAN、無線LANとの共存による、部分的、限定的な導入が図られていくことになるだろう。