ビジネスとITを融合するBPMとは--「BPM+SOA」で企業改革を! - (page 2)

佐々木政和(日本BEAシステムズ)

2007-02-23 08:08

BPMが注目される理由

 さて、なぜ今、BPMが注目されるのでしょうか? 多くの企業は、ITを駆使しながら非効率を是正することにより、コスト削減、収益の増加、企業競争力の強化などに取り組みながら、いかにして俊敏な企業体質を作り上げるかという課題を抱えています。企業内のそれぞれの部門での課題を具体的に見ていきましょう。

 経営層から見た不満の主たるものは、以下のようなものです。

  • 収益向上のために導入したITシステムの効果が見えない
  • 経営戦略を策定するための経営指標データ、特に業績予測の精度が低い
  • セキュリティ強化や法令順守(日本版SOX法、内部統制)対応のコスト増、リスク回避の方策が滞っている
  • 販売不振のボトルネックの特定化ができない
  • 現場からの不満の声が高まっている

 業務の現場の不満としては、現在のITシステムで対応できない紙ベースの処理や例外対応の業務が多く業務処理が煩雑、承認手順が複雑、各種の報告書作成に手間がかかる、顧客からの不満増などこちらもITシステムに対する多くの不満が蔓延しています。

 一方、ITマネージャ、開発者の不満はどのようなものがあるでしょうか? 度重なる仕様変更の影響のよるシステムトラブルが多発、開発期間の短縮およびコスト削減のプレッシャなど、経営層あるいは現場の業務ユーザとの不協和音が顕著です。

 企業は業務の効率化のためにこれまで莫大な投資を払いながらITシステム化を進めてきた訳ですが、「ビジネスとITのギャップ」の存在はいまだに解消できていないのが現実です。それは、何故でしょうか?

 その理由の1つに、「業務は変化する」という前提で変化に強い業務プロセスやITが構築されていない点が挙げられます。解決案として、継続的な改善を行うための「閉じたループ」(これがまさにBPMなのですが)を業務およびIT双方で共有する方策が挙げられます。同じ目標を共有して持つことでビジネスの変化に適応した俊敏な業務改革を進めることができます。この「継続的な閉じたループ」こそがBPMの本質です。

ソフトウェアベンダーのBPMアプローチ

 ソフトウェアベンダーは、BPMを効果的に進めるためにBPMS(ビジネスプロセス管理スイート)製品を提供しはじめました。BPMSは、ビジネスプロセスの分析、設計、実装、監視、評価、最適化のプロセスサイクル全体を通じて、継続的な改善を総合的に支援するソフトウェア製品です。

 プロセスライフサイクルを通じて、それぞれのロールに応じた機能を提供します。各フェーズでの作業結果は共有リポジトリに保存されるので迅速で無駄がなく効率的な開発および運用管理が可能になります。

 業務分析担当者向けには、ロール(役割)に基づいたスイムレーンを使った直感的なプロセスのモデリング、KPIを設定してボトルネックおよびプロセス全体のコストを分析/最適化できるシミュレーション、またこのモデリングでは、実ビジネスを透過的に写像するために人間のアクティビティとシステムアクティビティのモデリングを同等にサポートする機能、同期または非同期のプロセス対話機能、それから例外および補正フローのモデリングメカニズムなどが提供されます。これらはBPMN、BPEL、XPDLなどの標準規格に対応し実装されることが重要になります。

 アーキテクト、開発者向けには、ビジネスプロセス内のアクティビティをシステム化するために必要な機能が提供されます。Java、COM/DCOM、.Net、SQL、CORBA、JNDI、JMS、JMX API、Webサービスの連携機能やERPパッケージ、ESB(エンタープライズサービスバス)との統合機能を提供する単一の統合開発環境、さらにリポジトリを使用したサービスの参照/検出機能、ウェブフォームのユーザインタフェースの充実やブレークポイントを伴ったテスト環境、バージョン管理などです。現場の業務担当者の柔軟性を高めるためにルールエンジン機能も重要性が増しています。

 ITマネージャ、運用管理担当者向けには、各種データの監視および動的な変更処理のための機能が必要になります。ロールに基づいてカスタマイズ可能な作業リストとプロセス機能、統合されたレポートダッシュボード、プロセス監視および監査、プロセスインスタンスのリアルタイム監視、主要なパフォーマンス指標およびその他のプロセスデータのカスタマイズ可能なプロセス履歴レポート機能、さらに動的なプロセス変更や外部サービスへの動的なバインド機能ならびに委任、エスカレーション、担当者割り当てをサポートするアクティビティ再ルーティング機能などです。

 BPMS製品は、このような機能を共通のリポジトリにアクセスしながらシームレスに提供することで「ビジネスとIT」が反復を繰り返す「閉じたループ」ライフサイクル全般を効率よく実現することを支援します。

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