当初の顧客は個人や中小のベンチャー企業が中心だった。石井氏は、「おそらく開発環境として導入したのではないでしょうか。現在ではISVの企業が自社システムの中に組み込んで再販しているというケースも多くなっています」と話す。
なかでも全国展開しているCDショップが視聴機の中にPowerGres on Windowsを組み込んでいるのは代表的な事例のひとつだ。PowerGresの導入前は、店員が一台ずつデータをメンテナンスしていた。しかし、現在では、楽曲が非常に多く、人海戦術によりメンテナンスを行うことは現実的ではない。リアルタイムでデータベースからダウンロードして視聴するほうが効率的だということだ。
価格と継続性がOSSの魅力
現在、SRA OSSのビジネスは、コンサルティング、ソフトウェアサポート、トレーニング、パッケージソフトウェアが4本の柱で、特にどれかに依存するというのではなく、それぞれに売上げを伸ばしている。
OSSの一番の魅力はやはり第一に価格だ。前述のCDショップの事例では、視聴機すべてに商用データベースを組み込んだとしたら、それは天文学的な数字になる。広く普及している商用データベースに比較しても価格と性能で充分対抗できるのがPostgreSQLだ。
OSSを採用する別の重要な決め手として特定ベンダーの政策に縛られたくないという理由もある。たとえば、5年、6年と長期に使いたいと考えていても、特定ベンダーの製品を採用していると、それまで製品寿命が続いているかどうかが重要になる。突然の政策変更や、M&Aによる製品の消滅など、今ではそこまで考慮して製品選択を行わなければならない。
「その点で言えばOSSは製品の継続性が高いのです。目に見えないというと語弊がありますが、世界中の開発者がインターネット上から“これ開発してみよう”という興味を持つユーザーがいるかぎり製品は生き続けるわけです」と石井氏。
そのうえ、富士通やNTTデータなど、 大手メーカーやシステムインテグレーター(SI)もコミットしているという信頼感もOSSにとって順風と言えるだろう。
ただエンタープライズレベルでOSSを利用するとき、まだ課題も少なくない。たとえば、クラスタリングやデータレプリケーションなどで実現される高可用性ソリューションだ。MySQLではレプリケーション機能が提供されているが、SRA OSSでは「PowerGres HA」などにより高可用性ソリューションを用意している。
しかし、PostgreSQL本体には高可用性ソリューションはあえて組み込んでいない。この理由を石井氏は、「クラスタリングやレプリケーションは業種や業態で千差万別であり、顧客の環境に最適のソフトウェアを選択してくださいという考えからです」と話している。
とはいえ、PowerGres本体にもさまざまなクラスタリングソフトウェアが共通で利用できるモジュールを用意するなど、敷居を低くしていくことは必要だという。