「モルガンスタンレーなどの外資の金融機関などがいい例だが、ビジネスの正否を大きく左右するような、たとえばウェブレスポンスをあと1秒速くしたいという要求があった際に、商用OSであればベンダーに改善を委ねることになる。ところがこれがオープンソースならば、ユーザー自らが改良し課題をクリアできる。こういったことを自分たちでどんどん実現することで、現実に競争に打ち勝っている企業が出てきている。日本の一部のユーザー企業も、そういう世界があるということにやっと気がつき始めたところだ」(平野氏)
もちろんこれは、誰もが実現できることではない。自らに相当な技術力とリソースがあってはじめてできるOSSの活用方法だ。逆に考えれば、OSSベンダーやISVは、このOSSの自由度の高さをうまく活用できれば、顧客に対して大きなメリットを提供できることになる。
OSSにとっての2006年におけるもうひとつの大きなニュースに、Red HatのサポートビジネスにOracleが進出するというものがある。中身や進め方はともかく、Oracleのこの動きによりOSSのサポートビジネスの問題点が、議論のまな板の上にさらされたというのはきわめて意義が大きなことだ。
ライセンスではなくサポートサービスをビジネスとしてどのように確立していくのか、そして競合ではなく協調することで新たな価値を生み出せるか。この2つの方向性が、OSSのビジネスを成功させる鍵になるだろう。
「ノベルとしてはOSSはオープンスタンダードの一部であり、OSSだけが正しくてOSSだけを普及させていくというのではなく、マイクロソフトとの提携と同様、協調していくというスタンスで活動していきたい」(平野氏)
提供するサービスについては、競争でよりよいものを提供する。そして、ハードウェアのOSをどうするかという発想ではなく、協調のなかから現実的な顧客の価値を見いだすことができれば、新たなOSSビジネスをノベルという会社が先頭に立って牽引していくことも十分に可能であろう。