注目を集めるオープンソースの仮想化ソフトウェア「KVM」、その成功の可能性は? - (page 5)

文:Stephen Shankland(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、長谷睦

2007-03-08 20:51

 さらに、これまでXenに集まってきた注目が、KVMの登場によって分散する可能性もあり、これが事態をさらに複雑にしている。Xenは2006年7月にNovellの「SUSE Linux Enterprise Server」で商用デビューを果たしたばかりで、2007年3月に発売される「Red Hat Enterprise Linux 5」で、Red Hat製品に初めて導入される予定になっている。

 しかし、貢献度の高いLinuxカーネル開発者、Rusty Russell氏は、KVMによって乏しい開発者リソースをめぐる新たな競争が始まるとはみていない。同氏はXenとVMwareからの要求を仲裁してきたほか、ハイパーバイザ「lguest」の作者でもある。

 「KVMに取り組んでいる主力開発者はXenの開発者と重なっていない」とRussell氏は話す。「KVMは、伝説的なカーネル開発者であるIngo Molnar氏のような人たちを、それまで興味を持っていなかった仮想化に夢中にさせた。パイそのものが大きくなっているので、関係者すべてが、これまでより大きな分け前を手にすることになるだろう」

 しかし、製品のビルド、サポート、そして認証について、KVMには新たな制約が待ち受けている。NovellのDyroff氏によると、同社はKVMに興味を示してはいるが、サポートする仮想化技術は2つにとどめるつもりだという。1つはOSよりも下のレイヤ(Xenはこちら)、もう1つは個々のOSにパーティションを設けるもの(「OpenVZ」はこちら)になる見込みだ。

 Red HatはNovellと比べてKVMに熱心だが、同社のCTOであるStevens氏はXenと競合するプロジェクトの両方にリソースを割くことに懸念を示している。Stevens氏の話では、たとえば、同社が愛好家向けに提供してきたLinuxディストリビューションである「Fedora」を、次期バージョンのFedora 7では2つのバージョンに分割し、1つにXen、もう1つにKVMを組み込むことも検討しているという。というのも、同社としてはFedoraでは主流のLinuxカーネルを追いたいのだが、こちらにはKVMが入っている。一方、XenはKVMが搭載される以前のカーネルを利用しているからだ。

 皮肉なことに、こうした複雑化要因を考えると、オープンソースのKVMが成功した場合に最大のメリットを得るのは、当面はプロプライエタリ側にいるライバルのVMwareということになるかもしれないと、Illuminataのアナリスト、Haff氏は指摘する。「VMwareはこれを歓迎するはずだ」

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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