万川集海 第9回:エステティシャンがデータを救う--テープリカバリサービスのお話 - (page 2)

大谷健治(日本IBM)

2007-03-15 08:00

しわをのばして美しい肌へ

 テープ上にしわや折れがあるために、その部分に書かれたデータが読めないこともある。人の肌もしわが目立ってきた場合、温めてマッサージすると見違えるようなはりが出てくるが、テープの場合も温めて伸ばす。高温のオーブンに入れて温められたテープメディアをテープ装置に乗せ、高いテンションで巻き取る。これによりテープが引っ張られ、テープ上のしわや折れが伸ばされる。

 人肌に個性があるように、テープにもさまざまな種類があり、その種類によって特性が変わる。厚みの違いによって加熱する温度等も変わるため、そのテープに合った調整が必要だ。これは、エステティシャンが施術前にカウンセリングを行うのと似ている。

 そして、滅多に起こらないのだが、テープが途中で切れることもある。さすがに切れた部分のデータを修復することはできないが、それ以外の部分のデータを救出することは場合によっては可能だ。これには、まずテープをつなぐ作業を行う。特殊な機器を使って、修復不可能な箇所の切断と接続が行われる。人でいうと整形外科手術のようなものだ。引きちぎられたようなテープ切れが起きると、つなぎ合わせても周辺がしわとなってしまう。それを助けるのがエステティシャンだ。整形外科手術を受けた後、エステによるフォローがなされる流れがここにある。しわを綺麗な状態にする役目を担う。

日常の生活から美しく

 物理的なダメージを受けたテープも、エステティシャンによって救われるという事実がおわかりいただけただろうか。最後にひとつ。日常の生活から美しく、と著名なエステティシャンが言っていたのを思い出した。たまにエステに通って綺麗になるよりも、普段の生活を改善することで綺麗になることが大事だという意味だ。

 テープの世界でも同じである。技術の進歩によってドライブやメディアが信頼性を高めていることは冒頭で述べたが、テープに書かれた大切なデータを守るためには、適切な温度や湿度を保った場所に保管し、埃の出やすい環境での使用は避けなければならない。お肌もテープも日頃のお手入れからなのだ。

エステティシャンがテープを救う - 大谷 健治
第9回筆者紹介エステティシャンがテープを救う

大谷 健治 (おおたに けんじ)
日本IBM 大和システム開発研究所 サーバ&ストレージ製品技術 ハードウェア開発エンジニア テクニカルエキスパート
職務:テープ製品の製品技術
一言:入社以来、テープ製品に携わってきました。技術的なところも面白いのですが、最も興味を惹かれたのが、このテープデータリカバリサービスでした。クリエイティブな作業によって、データが復元される。この工程を少しではありますが、紹介させていただきます。あまり知られていないことかもしれませんが、芸術的な仕事であるからこそ、スポットライトがあたらずにきたものかもしれません。これを機会に、テープのデータリカバリサービスを知っていただけたら幸いです。

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