「People-Readyビジネス」の中で、サーチの技術は極めて重要な役割を担う--マイクロソフト平井氏 - (page 2)

柴田克己(編集部)

2007-04-12 22:51

--「社員力を、経営力に」という言葉は、何を目指したテーマなのでしょうか。

 ビジネスの中で、ITがもたらす価値が高いことは、すでに自明の理です。現在、ITと経営は切り離せないものになっています。

 しかし、過去におけるITの変遷は、基本的にITのツールやメソドロジーの進化の変遷だったと言えるかもしれません。大型汎用機からクライアント/サーバへの変化は、それによって、開発生産性が高まるとか、TCOが削減できるとか、ウェブ系の新しい仕組みが導入できるなどといったメリットはあったかもしれませんが、企業やユーザー部門にそれ以上のメリットをもたらすものではなかったのではないでしょうか。

 これだけビジネスの環境が複雑化し、新たなコンプライアンスの要求があり、Web 2.0のような新しい仕組みも見えてきた今、改めてもう一度、企業を動かす個々の「社員」にスポットを当てなければ、企業は成長できないのではないか、という問題提起がこのテーマの発端です。

 経営者に向けた今年のキーワードのひとつは「イノベーション」のようですが、では「イノベーション」を引き起こす原動力は何かと言えば、それは個々の社員です。社員が個々に持つ戦略やアイデアを、どう具現化するかにかかっているのではないでしょうか。

 今、多くの企業では、我々の製品である、Outlook、Word、Excel、PowerPointのようなOffice製品を使っていただいており、それらはWindows上で動いているという状況があります。社員の方々がビジネスと接する際に、一番近いところにいるのがマイクロソフトだとしたら、その「社員力を高める」ということを声高に叫ぶというのは、マイクロソフトの使命なのではないかと思っています。

--社員力の向上で生産性を高めるという考え方がある一方で、経営戦略を実現するためのビジネスプロセスとそのフローを中心に据えた考え方というのもあります。

 一時期、「ビジネスプロセスイノベーション」という言葉がもてはやされましたね。たしかに、ビジネスプロセスの定義や効率化という考え方は重要です。しかし、実際の現場において、ビジネスプロセスの7割は「例外処理」だという調査もあります。完璧に定義されたプロセス通りに流れるビジネスというのは、ほとんどなく、実際には、その流れは刻々と変化し続けるもののようです。想定されていない事態が起きた際の例外処理の比率が増え、そこにコストがかかっているのです。

 プロセスを運用するのは人であり、それは現場の社員です。もちろん、例外処理をこなすのも社員ということになります。その社員に焦点を当て、生産性を高めない限り、企業としてのトータルコストの削減にはつながらないのです。プロセスインテグレーションだけでは、この問題は解決できないことを、経営者は理解しなければならないと思います。

--企業情報システムで、個人の生産性を高めるための技術として、近年エンタープライズサーチに注目が集まっているようです。「社員力を高める」をテーマとした、マイクロソフトのエンタープライズ戦略の中で、この技術の位置づけはどのようなものですか。

 ある調査によると、平均的な社員の労働時間の48%は、何か情報を検索したり、加工したり、分析することに使われているといいます。ビジネスに必要な情報を探しだすという広義の「検索」という行為に限ると、ざっくりと1週間のうち9時間は、この作業をしているという計算になります。たしかに「検索」という行為が、仕事の中で占める割合は高まっているようです。

 しかし、それを理由として、マイクロソフトは検索技術にフォーカスしているわけではありません。

 検索は、ビジネスの一連の流れの中でのひとつのアクションであって、「結果が出たら、それで終わり」というものではありません。むしろ、結果が出た状態がスタートになり、そこから情報を加工したり、分析したり、その結果をフィードバックするという行為へとつながるのです。

 マイクロソフトでは、検索技術単体でものを語ったところで、何ら成果はないと考えています。サーチして、発見して、使い、それを共有する。つまり「Find、Use and Share」という一連のプロセスの中にサーチを位置づけています。

--現在、グーグルやオラクルなどを含む多くのベンダーが、企業内検索の市場に参入してきています。マイクロソフトがそうした他ベンダーと差別化を図るのは、どの点になるのでしょうか。

 グーグルなどのビジネスは、インターネット検索を出自としています。一方、現在の企業内検索はイントラネットの流れの延長線上になります。さらには、ユーザー個人が利用しているデスクトップの中でさえ、必要な情報がどこにあるか分からないという状況は起こっています。

 デスクトップ、イントラネット、インターネットという、3つの違う世界を、ひとつのインターフェースで検索し、その結果を利用するというのが、マイクロソフトのサーチにおける特徴のひとつです。

 デスクトップについては、現在、Windows 2000/XP向けに「Windowsデスクトップサーチ」というアドオンを提供しているほか、Windows Vistaには同等のものが標準機能として搭載されています。イントラネットおいては、Microsoft Office SharePoint Serverが、サーチ機能の中核となります。また、インターネット検索については「Windows Live Search」を提供しています。

 現在、「Windows Search」という技術が開発段階にあり、これを使うと、ひとつの検索窓で、これら3つの世界を統合的に検索できるようになります。どのような形で提供されるかはまだ決まっていないのですが、恐らく、Vistaのアドオンのような、ユーザーにとって最も使い勝手の良い形で出てくるはずです。

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