ここでは、原則としてオープンスタンダードに基づく調達を明示。つまり、政府調達では、個々の事例としてソースが公開されているということを基準として設けることはあっても、基本はオープンスタンダーであることを基本方針とした。
「調達は、ある性能を満たすものを買うということですから、その性能さえ満たしていれば中身はどうでもいいわけです。ですから、ある性能が欲しいというとき、それとソースが公開されているということは通常は関係がないわけで、それに踏み込んだ仕様の指定も適切ではありません」
オープンソースかそうでないかは、性能とは関係ない。そこで、オープンソースではなく、求めるべきはオープンスタンダードだということが共通理解となってきた。
政府調達ガイドラインを補完
しかしそうはいっても、オープンソースが必要という分野はある。ナショナルセキュリティが求められるような分野だ。国防に係わるような分野の情報システムでは、システムの中身が見えていないと危ない場合もある。
「それはそれで、ソースが公開されているという仕様を書くことはありますが、政府全体の調達のガイドラインとしてオープンソースを優先させるという記述は無くしてあるわけです」と田代氏
しかし、オープンスタンダードで各情報システムのインターフェースが統一され、システム連携が容易になるということは、自治体で進んでいる町村合併でも必要なことである。オープンソースが絶対条件にはならなくても、仕様からOSSが排除されることはなく、むしろOSSが有利になるということは自明の理だ。
田代氏も「この総務省の調達ガイドライン策定の背景には、業界団体である日本OSS推進フォーラムでの勉強会などの活動があります」と指摘する。
「我々としても、この総務省のガイドラインに協力していくのは当然です。むしろ、総務省のガイドラインは全体的なフィロソフィを書いているもので、現実にこのガイドラインに基づいて仕様書を書く場合、どのようにすればいいのかという現実問題があり、それに応えるような細かい作業はわれわれでやっていこうかと思っています」
たとえば、自治体がデータベースを調達するとき、仕様書をどう書いたらいいのか分からないという声もある。政府調達といっても調達側に十分なスキルがない場合が多い。ベンダーの営業マンにいわれたままに仕様書を書くというようなこともなくはない。そうすると、一般的な表現のように見えても、内実はそれを満たす製品は特定のものに限られるということも出てくる。
そこで田代氏は「そうならないためのテンプレート作りを計画しています。この総務省のガイドラインを実現しやすくするためのお手伝いとして、そうしたことを計画しています」と話す。
実施基準は総務省が作るにしても、さらに詳細な部分についてはIPAが担うということである。その裏には、日本のソフトウェア産業を振興するという経済産業省的の視点も含まれているようだ。政府調達は、日本のソフトウェア産業振興のドライブフォースにはなるわけで、そこでOSSが重要な枠割りを担うことは間違いない。